『仁王雅治(28)意識不明』


大きな見出しで伝えられていたのは衝撃の事実だった。


「文月は話そうとせんかったから、訊かんかった」

「文月は俺達に知られたくねぇって思ってんだって思ったからな」


文月は泣いていた。

ただ泣いていた。


「一緒にいた少女っちゅうんが文月やと俺は思っとる」


俺達だってそう思うだろう。

この記事を読んで、文月と仁王を見ていたら。


『轢かれそうになった一緒にいた少女を助け、現在意識不明の重体。少女は無傷であった』


しかし、文月の言う殺したというのは何かひっかかる。

これだけでも殺したと言えなくはない。

推測に過ぎないが、文月は誰かにそう言われたのだろうか。

そう思えば、文月の怯えている理由もわかる。


「仁王はお前が殺した」


ビクリと文月の肩が反応を見せる。


「参謀っ!」

「いや、俺が思ったわけではない。文月、誰に言われた?」


全員が息をのんだのがわかる。

文月は驚いたようにもともと大きな目を更に見開き、俺を見つめた。


「文月、ホンマに言われたんか?」


仁王に問い掛けられ、文月はフルフルと首を横に振った。

明らかな否定ではあったが、俺達には肯定にしか見えなかった。




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