五
『仁王雅治(28)意識不明』
大きな見出しで伝えられていたのは衝撃の事実だった。
「文月は話そうとせんかったから、訊かんかった」
「文月は俺達に知られたくねぇって思ってんだって思ったからな」
文月は泣いていた。
ただ泣いていた。
「一緒にいた少女っちゅうんが文月やと俺は思っとる」
俺達だってそう思うだろう。
この記事を読んで、文月と仁王を見ていたら。
『轢かれそうになった一緒にいた少女を助け、現在意識不明の重体。少女は無傷であった』
しかし、文月の言う殺したというのは何かひっかかる。
これだけでも殺したと言えなくはない。
推測に過ぎないが、文月は誰かにそう言われたのだろうか。
そう思えば、文月の怯えている理由もわかる。
「仁王はお前が殺した」
ビクリと文月の肩が反応を見せる。
「参謀っ!」
「いや、俺が思ったわけではない。文月、誰に言われた?」
全員が息をのんだのがわかる。
文月は驚いたようにもともと大きな目を更に見開き、俺を見つめた。
「文月、ホンマに言われたんか?」
仁王に問い掛けられ、文月はフルフルと首を横に振った。
明らかな否定ではあったが、俺達には肯定にしか見えなかった。
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