「文月ー、昼飯食うぜぃ」

「ブン太、朝もたくさん食べたのに」

「テニスしたら腹減んだよ」

「丸井の場合はいつも空腹状態じゃろ?」


クスクス笑う文月が仁王の一言で肩を震わせ笑いを堪えていた。


「文月、笑いすぎだろぃ」

「だって、まーくんが…」


その瞬間、全員の行動が止まった。

聞き慣れない呼び名。

しかし、それを使った文月は使い慣れたようにそう呼んだ。

文月自身がしまったという顔をしていることから、普段の呼び名と変えて呼んでいたのは明らかだ。


「まーくん、てなんスか?」


赤也の問い掛けに、仁王と丸井がバツの悪そうな顔をした。


「私、やっぱり帰ったほうが」

「文月、帰んな」

「ブン太…」

「そうじゃよ、文月。俺らが無理言うて連れてきたんじゃ、気にしなさんな」

「雅治」

「最初から隠し通せるなんて思ってねぇよ、俺達は」


文月を慰めるように言う丸井達の姿は見慣れないものだった。


「何者なんだよ?アンタ」

「わ、たしは…」


自分達を無視して進められる会話にじれた赤也が文月を睨みつけていた。

明らかに敵意を抱いたそれに仁王が文月を背に隠した。


「睨みなさんな」

「赤也止めておけ」


赤也を制する仁王の目に剣呑な光を感じ、赤也を止めた。



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