三
三人で囲んだ食卓はなんだか楽しかった。
「文月はなんでブンちゃんて呼んどるんじゃ?」
唐突な質問にきょとんとすると、まーくんが苦笑した。
苦笑ではあるけれど、どこか優しい笑顔。
「2人だったりまーくんと3人だったりだと、パパって呼ぶ時もあるけど、蓮ちゃん先生とかがいる時はブンちゃんって呼ぶようにしてるんです。赤也先生がからかうから」
「赤也先生…?」
コクンと頷いた。
「立海中で国語の先生をしている赤也先生です。パパ達の後輩だって言ってました」
「赤也先生っつうのは切原赤也か?」
「はい」
ニッコリと笑って、頷いた。
赤也先生は好き。
明るくて面白いから。
不器用だけど私には優しくしてくれる。
「赤也が教師のぅ」
「なぁ未来の俺らって何してんだ?」
ワクワクとかイキイキとかそんな言葉がぴったりな表情でブンちゃんが問う。
「パパは外資系企業で働く商社マンです。まーくんは…」
まーくんは、有名な設計士だった。
まーくんの未来を奪ったのは、他でもない私。
「文月?」
カタカタと手が、身体が震えだす。
怖い、怖い、怖い。
『「文月!」』
ブンちゃんの声がパパのその声と重なった。
未来は本当にあるのですか?神様。
問い掛けは自問に終わり、ただ私は未来に続く道ではなく、過去へと続く瓦礫の道を歩いてゆくしかないのだと確信した。
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