二
「文月、起きろぃ!」
ブンちゃんの声に瞼を上げた。
「おはよ」
「おはようございます」
「おはようさん」
私が未来からきたブンちゃんの娘だという到底信じられる話ではない話を彼らは信じてくれたようだ。
「文月は嫌いなもんとかあっか?」
「いえ」
「朝はパンとスクランブルエッグじゃ」
「ありがとうございます」
思い出して、笑みを浮かべる。
まーくんは自分が面倒だから朝は大抵パンだった。
「どうかしたか?」
「い、いえ!顔、洗ってきます」
「おぅ」
カチャカチャと朝食準備を進める音を背後に洗面所へと駆け込んだ。
鏡に映る私は以前となんら変わりはない。
ブンちゃんとまーくんが伸ばした方がいいってニコニコ笑うから伸ばし始めた赤い髪は肩口を過ぎて胸の辺りまで伸びてる。
「もう会えないのかな…」
このまま帰れないのではというのは考えたくなかった。
だけど、もし私が居なくなったことでブンちゃんやまーくんが幸せになれるなら、私は喜んで居なくなる。
「文月ーっ飯食うぜぃ」
パシャッと水を鏡にかけた瞬間、ブンちゃんに呼ばれる。
「はい、今行きます」
返事をして、戻ろうと鏡に背を向けた。
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