一
目を覚ましたら、すべてが夢で、パパとママが笑っている。
そんなこと、何度も思ったけれど、一度だって叶ったことはなかった。
だって、文月はママなんて知らないから。
物心ついたときにはもうパパであるブンちゃんと2人だった。
でも、寂しくなんてなかった。
ブンちゃんのお友達がいつも一緒だったから。
入院したら、病院には侑ちゃん先生がいたし、お家にはよくまーくんや蓮ちゃん先生や赤也先生も来てくれた。
陽菜ちゃんも比呂くんもいっぱい遊んでくれた。
だから、寂しくなんて、なかった。
パパとお揃いの赤い髪をからかわれたって、病気がちな身体を笑われたって、平気だった。
友達なんて、いらなかった。
それでも、でもね、ホントは少し憧れていたの。
パパが作るお菓子は好きだけど、ママが作ってくれるお菓子が食べてみたかった。
まーくん達と遊ぶのは楽しかったけれど、同じ年の子と遊んでみたかった。
病院やお家の中は快適だったけれど、お外でいっぱい走ってみたかった。
やりたいことは一杯あったの。
でも、パパの負担になりたくなかったから、全部我慢した。
なのに、どうして、私はパパに迷惑しかかけられないんだろう…。
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