目を覚ましたら、すべてが夢で、パパとママが笑っている。

そんなこと、何度も思ったけれど、一度だって叶ったことはなかった。

だって、文月はママなんて知らないから。

物心ついたときにはもうパパであるブンちゃんと2人だった。

でも、寂しくなんてなかった。

ブンちゃんのお友達がいつも一緒だったから。

入院したら、病院には侑ちゃん先生がいたし、お家にはよくまーくんや蓮ちゃん先生や赤也先生も来てくれた。

陽菜ちゃんも比呂くんもいっぱい遊んでくれた。

だから、寂しくなんて、なかった。

パパとお揃いの赤い髪をからかわれたって、病気がちな身体を笑われたって、平気だった。

友達なんて、いらなかった。

それでも、でもね、ホントは少し憧れていたの。

パパが作るお菓子は好きだけど、ママが作ってくれるお菓子が食べてみたかった。

まーくん達と遊ぶのは楽しかったけれど、同じ年の子と遊んでみたかった。

病院やお家の中は快適だったけれど、お外でいっぱい走ってみたかった。

やりたいことは一杯あったの。

でも、パパの負担になりたくなかったから、全部我慢した。

なのに、どうして、私はパパに迷惑しかかけられないんだろう…。



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