初代で微悪ノパロ
2011/04/19/17:24(comment)


ヒロイン:リチェ(ジョットの双子妹)


昔々の遠く今はもう何処にあるかもわからない、そんな国の御伽話。
仲睦まじい国王と王妃の間にはたった一人大事に大事に育てられた王子がいた。
彼の名前は、ジョット。
王子が10歳の誕生日、悲劇が起こる。
国王と王妃が相次いで病に倒れ、還らぬ人となってしまった。
王位継承を余儀なくされ、僅か10歳でジョットは国を背負うこととなるが、彼の周りも彼も滞りなく国を治めるに至った。
そして、出逢いはやって来る。


コンコンッ


ジョットがノック音に顔を上げれば、扉を開け入って来たのは、父親の時代より王家に仕え、自分の教育係にも近い存在であったD・スペード、その人だった。
いつも一人で訪れる彼の後ろにはふわふわとした印象を受ける自分と似た色合いを持つ髪の長い少女が居る。
少しばかり訝しげに眉間に皺を寄せたが、Dは気にした様子もなく、微笑んだ。


「新しく貴方の身の回りの世話をすることになったメイドですよ、ジョット」

「身の回りの世話?私はもう子供ではないぞ」

「放っておいたら、ベッドに行かずにその辺りで適当に寝るのは誰でしたか?」


厭味とも取れる言葉にギクリと肩を揺らしたジョットは話題を逸らそうと、少女に目をやった。


「君の名前は?」

「リチェと申します、ジョット様」

「そうか。宜しくな、リチェ」


応えるように笑ったリチェの顔はよくは見えなかった。
それもその筈、彼女の顔は大きなレンズでその殆どを覆っている。
そのことは余程目が悪いのだろうと、ジョットは自己完結に至った。


「では、リチェ、ジョットを頼みましたよ?」

「はい、畏まりました。スペード様」


それが彼と彼女の始まりだった。
若き王はまだ知らない。
新入りの召使がレンズに隠した瞳が自分と同じ大空のような蒼であることを。
部屋を出る為に背を向けた霧が悲しげに表情を歪めたことを。







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