「凄い地層だね…」
ジュードの声がする。ああ、寝ぼけていたとサリアは頭を軽く振って眼を覚ます。
確かにすごい地層だった。何でもラ・シュガルでも有数の境界帯らしい。
エリーゼが不安そうな瞳をしている。サリアは、殺気の方向にちらりと眼を向けた。
「(狙撃兵、か)」
そうとなれば自分達の後ろのどこかにも隠れているに違いない。
地層を見る振りをして、そろそろとジュードたちと距離をとっていく。
「…危ない!」
ジュードの声がした。そろそろ動くか。腰元の剣を確認して、一気にジャンプした。
「(居た…!)」
ジュードたちの背後の崖の上に二人、同じような狙撃兵が居る。
音も無く殺す、そう決め手静かに近寄った。一人、うまくいった。二人目、距離が遠い。
「仕方ないなあ」
ブーツから小さな短剣を取り出した。狙いを定めて投げる。命中。
「(よし)」
静かに事を済ませて、何事も無かったかのように戻る。
アルヴィンが、一瞬だけこちらを見たけれど、何も言わなかった。
「アルヴィン、」
「だめだ、場所が悪い。」
「僕が注意をひきつけるよ。その間に狙撃兵を」
ジュードがそう言って前に出る。狙撃兵がジュードに狙いを定めている。
ジュードはその矢を、最小限の動きでかわした。
「こいつ、この距離で!?」
狙撃兵が驚いたように言う。その動揺の隙にミラが剣を振りかざす。
アルヴィンがボウガンを弾き落とすと、狙撃兵はあっけなく斬られた。
「すまない、助かった。」
「そう言われるポイントで活躍するのが傭兵のコツなんだ…なっ」
アルヴィンが肩に腕を回してサリアに言う。困ったような顔をして、
サリアはそうかもね、とだけ答えた。ジュードは苦笑いしている。
「これは…イル・ファンで感じた気配…?」
人体実験にご対面だなあ、なんて思いながら先へ進むと、そこは禍々しい空気が渦巻いていた。
ミラが結界のようなものに手を伸ばせば、アルヴィンがそれを止めた。
ジュードは知り合いがイル・ファンで殺されたらしい。そんなことを思いながら、
サリアは上手く状況を読み込めずに客観していた。ミラは一人呟いている。
「私達を追うのを止めた理由がこれか…下らぬ知恵ばかり働く連中だな」
「…谷の頂上から侵入して、術を発動しているコアを破壊できれば…」
ローエンの提案に、全員一致で谷の頂上へ向かうことになる。
しかしバーミア峡谷は、登ったり降りたりと忙しい。
サリアの疲労も徐々につらいレベルになってくる。しかし言い出すことも出来ず、
サリアはどんどんと何時も以上に無口になっていくのだった。エリーゼがジュードに呟く。
「…サリア、さん……怒ってます…」
「え?……ほんとだ…なんでだろう…」
(決して怒ってません!疲れてねむいんです!)
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