自由行動となったため、サリアは今度こそカラハ・シャールの街をまわる。
色々な店が出ていて、気分的にも楽しい。
本当は宿に帰って眠ってもいいのだが、気を失っているうちにまだ活動できる程の体力は回復していた。
それに、よく急展開に巻き込まれる彼らだ、
明日には此処を立つ事情になるやもしれない。
そんなことを考えながら、アクセサリーを見る。
普段はアクセサリーなど見につけないが、サリアはそういった類のものが嫌いではなかった。




「(欲しいな)」



そう手に取ったネックレスは、紫の石が光るシンプルなもの。
装飾が多いものも嫌いではないが、シンプルだとずっとつけていられる気もした。
買うか、と直感で思った瞬間、隣に置いてあったブレスレットに目がいった。

「(あ、これ、)」

一瞬、自分を運んでくれた傭兵の顔が頭によぎった。
きっと似合うだろうなと思ったが、アクセサリーを渡すのもおかしい気がする。
お礼をしなくてはいけないと思ってはいたが、アクセサリーだとまるで彼女か何かのようだ。
それはレザーブレスレットだが、目立たない場所に橙の石が埋め込まれていた。
出会った当日に汚しかけてしまったフィシマージュのスカーフが連想される。




「(いらなければ捨ててもらえばいいか)」


そんな単純な考えで、サリアは二つとも購入した。
宿に戻ると、すっかり夜になっていた。ベッドに入るには、まだ早い。
酒でも飲もうか、と酒場へと足を向かわせる。
そしてふとドアの前で足を止めた。この格好は、酒を楽しむにはあまりにも窮屈だ。
せっかくだし、ネックレスもつけてみたい。どうせなら、ドレスでも着てみようか。
サリアはすっかり乗り気になって黒いパーティドレスを借り、
先ほど購入したネックレスをつけ、髪をアップにまとめた。
これなら随分マシだろう。しっかりと腿に短剣を3つ仕込むと、
サリアは満足げに酒場へと繰り出した。



酒場のバーカウンターでロックのウイスキーを煽る。
格好には少々不似合いだったが、この格好のおかげか誰も声は掛けてこない。
大方、人を待っていると思われているのだろう。サリアは、微笑んだ。
久しぶりに飲む酒は、少々喉を焦がすが心地良い。
自分の置かれている状況を忘れさせてくれ、いつも回っている頭が休息を得る。
ふわふわとした感覚に襲われ、酔いが回ってきたと自覚させられる。

「マスター、次で最後にするね、もういっぱいー」

「お客さん、さっきも言ってましたよ、それ」

「気のせい気のせいー」

本当にこの一杯でやめるつもりだ。そう自分にいいきかせて、酒を煽る。
気付けば相当量飲んでいた。理性が残っているうちに止めて、部屋へ帰ろうとした。








「…サリア?」

「…?…ぁ、アルヴィン?」


フィシマージュのスカーフが、小さく揺れた。





(なんか、運命的みたいな、ね)





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