捕まらない鳥

「で、連絡は取れたか? ロマーリオ」

その一言は最近のディーノの一日をしめくくる一言になっていた。連絡したい相手は数週間前突然の任務という理由からボンゴレから姿を消した恭弥である。
ボスである綱吉でさえ、定期連絡以外の連絡は何一つ受け取っていないと言っていた。しかしディーノは時が経てば経つほど恭弥に会いたくて、仕事の合間を縫って部下に恭弥へ連絡をさせているのである。

「今日も収穫はゼロだぜ」

ロマーリオは少し眉間に皺をよせ、そう答えた後には溜息を一つ零した。恭弥と連絡が取れない事は珍しい事ではないが、部下にとってそれは少々難しい問題だった。
何故ならディーノは恭弥に会えない時が長くなれば長くなるほど仕事がはかどらなくなっていくのだ。
本人曰く

恭弥欠乏症

らしい。そんな子供みたいな事をいうディーノにロマーリオは呆れつつもあったが、それだけディーノが恭弥に惚れている事実は変わりようもなかった。
それに小さい時から側近を勤めるロマーリオにとって、ディーノはボスでもあるが息子の様だと思える部分もあるのだ。

その息子の様に思えるディーノが好きな人と上手くいっていることは嬉しいことだった。始めは何で男なんざ好きになっちまうんだボスは…、と思ったがディーノは周りの意見など聞かず恭弥しか見ていなかった。見えていなかった。

いつだってディーノの優先順位は恭弥が一番だった。

確かに現実問題的にキャンセルできない仕事等はあった。しかしディーノはどんな時も恭弥を想い恭弥だけを求めてきた。そこまで惚れ込んでしまっている以上、現状は仕方のないことと言ってしまえば確かに仕方のない事なのだ。

「はぁ〜、恭弥の奴本当どこいっちまんたんだよー」

ディーノは今日終えた書類の山を端に寄せた机に突っ伏すようにしてそう言った。
恭弥に最後に会った時から数週間、電話の連絡は一向に取れずメールはいつまで経っても返ってこなかった。返信を待つことに耐えられなくなったディーノは、綱吉に恭弥の任務は忙しいのかと尋ねた事がある。返事は意外なもので

『どうでしょう…今までよりは断然忙しくないと思いますよ』

というものだったのである。
つまり恭弥は任務が忙しくてメールを返せないのではなく、ただ単に返してないだけなのだ。恭弥に会えない寂しさとメールをずうっと無視され続けるディーノは、日々仕事に影響を与えるばかりだった。

「本当にあいつは昔っから鳥だな」
「ん?」

ロマーリオの言う言葉にディーノは顔だけを向けて反応する。

「飛びたい時に自由に飛んでいなくなるのに、いつのまにか帰って来ていてこれまた自由に動き回る。掴まえようと思えば掴まえられなくて、掴まえられないときに姿を現わす。…そう思わねぇか? ボス」
「言われてみれば、だな」

恭弥は鳥だ。自由に飛んで籠に入ろうとしない。

離したくはないのにすぐに離れていってしまう。


その行動は本当に自由に生きる鳥の様だ、ディーノはそんな事を思った。


捕まらない鳥、どこにいるのかも分からない

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