君は鳥のように自由で

恭弥と最後に会ったのは数日前の事である。たまたますぐにボンゴレの近くまで行く仕事があり、俺はついでに恭弥の所に寄っていこうと考えていた。一週間と間を開けずに会えるのなんて滅多にない事であり、会えるなら会いたい俺はきっと恭弥は「もう来たの?」なんて言うだろうなぁなんて思ってボンゴレ本邸へ向かった。
恭弥の予測出来る反応ともうすぐ会えるんだなって事を考えていると自然と顔の筋肉は緩くなっていた。いつも傍にいる有能な部下のロマーリオに指摘されるほどに俺の表情は緩んでいた。

それは仕方ない。だってずっとずっと長いこと想い続けている恋人なんだ。
愛しい人に会えることをこんなにも幸せだと思わない人間なんていないはずだ!


しかしこの幸せはボンゴレ十代目ボス、沢田綱吉の言葉によってすぐさまに崩されることとなった。
ボンゴレ本邸へ来たからには、ボスへ挨拶をするのは当たり前の行為となっている。恭弥の居場所もすぐに知れるだろう、そう思って綱吉の執務室を訪れたディーノであったが、今日は帰って来ないと聞くなりガックリ肩を落としてしまった。

「任務だよな? ん〜じゃぁ仕方ねぇな、いつ戻ってくるんだ?」

仕事があるのは仕方のないこと。それは自分自身とてもよく分かってる事だった。連絡なしで会えることなど滅多にない、そもそも連絡してても会えることが少ないのだ。
そんな事は前から分かっている事なのに恭弥に会える嬉しさからその可能性を頭から排除してしまっていた。予測出来たことに気がつかなかった自分の浮かれように、ディーノはもう少し大人になんねぇとなぁと一人心の中で反省する。

「えーと、ですね」

そんな事をしている間に綱吉はディーノの問いに対しての答えを出そうとしていた。しかしそれは歯切れの良い物ではなくて、綱吉自身の自信のない濁った返事としか言い様がないもののようだ。

「わからないんですよ」

続けて告げられた言葉はやはり曖昧だった。
わからない、その答えにディーノは真っ先に何故だろうという疑問が頭の中に浮かんだ。しかしそれは恭弥の性格を考えれば容易に想像出来るものだった。大方恭弥が突然言いだした事に綱吉が任務をあてがったものなんだろうと。

「恭弥のやつ突然だな〜、なんかあったのか?」

ディーノの問いに対して綱吉は雲雀さんは声がでなくなりました。なんて言えるはずもなく続ける言葉に迷ってしまった。恭弥が長期任務を希望したのには声が出なくなってしまったのが少なからず関係するのだろうけれど、それが確実な理由とは考えられない。
しかし他に何か理由がありそうだと考えてみても本人からは何も理由は聞いていないし、何故声が出なくなってしまったのかも綱吉には分からなかった。分かることは声が出ないという事を恭弥は隠しておきたくて本人は長期任務に行くと言いだしたんだろうと言うことと、ディーノにも例外はなくそれは実行されているという事だ。
綱吉には超直感で気がついたあの日の恭弥の悲しみの理由が気になる訳だが、守護者のプライベートに深く突っ込む訳にもいかなくてそれすらも解明させることができなかった。特に相手は恭弥だ。人に詮索されるなんて嫌いじゃないはずがない。

「…分からないんですよね、」

どうとも返せず綱吉はディーノにそう返すしかなかった。

「そっか。じゃぁ俺から連絡してみるな、邪魔したなツナ」

そう言ってディーノは綱吉の執務室を後にした。綱吉にもディーノにも分からない事の真相、それは恭弥自身にしか分からないことだった。けれど恭弥は認めたくなくてその事実から目を逸らしている。


会いたい、けど会いたくない。


そう思う恭弥の心は現在イタリアからは遠く離れた所にあった。


君は鳥の様に自由だから、簡単には見つけられない

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