日常からいなくなった

「―……、いないの?」

昨晩一緒に寝たはずなのに、朝目覚めたら横には誰も何もいなかった。布団は沈むこともなく、すでに完全に空気を含み普段の状態へと戻っていた。その様子からとっくに起きてしまったということが分かる。
何処にもいないその存在を探して部屋を歩き回る。全ての部屋のドアを開けて中を確認する、何度も名前を呼ぶ。

けれどどこにもいない。

窓を開けて外を見てみる。日差しにうっと目が痛み、そこで自分が随分と寝過ごしてしまった事に気がついた。だけど今日は仕事や任務について心配する事など何一つなかった。何故なら今日は月に幾度しかない休日だったからだ。
そのせっかくの休日を一緒に凄そうと思って昨日は一緒に寝た筈だった。それなのに起きたらいつもと変わらない一人の朝だった。

先に目が覚めていて寝坊した僕に声を掛けてくれるのかと期待していたが、寝ぼけた頭が段々に覚醒していく中でその声を聞くことはなかった。ゆっくりと時間を掛けて覚醒した頭。目をこすりながらベットから這い出て部屋を見渡した。
どこにもいない事に気がついたのはその時だった。

「ねぇ、どこにいるの? 僕が呼んでも出てこないなんて咬み殺されたいの?」

一人呟きながら家中を探した。ここはボンゴレ敷地内にある、群れを嫌う自分のために建てられた小さな一軒家だった。一階を一通り捜し終えて二階へと移動をする。
階段を上がってすぐの部屋、一人で住むには広すぎる家に充分すぎる広い書斎の扉を開けた。もう一度名前を呼んでその姿を探す。
普段からこの部屋には立ち入らないようにと伝えているし、ドアはしっかり閉まっていたのでこの部屋にいる可能性は低かった。しかし何処かに隠れてるかもしれないので全ての部屋をしっかり見てまわった。
書斎のチェックを終えた後は順々に他の部屋の確認もした。

やっぱりどこにもいなかった。

家の中にはいない、外にもその姿はなかった。
そうであるなら残りの可能性は勝手に出て行ってしまった事しか考えられなかった。

「どこいったんだろ…」

そう呟いて一回の寝室へと戻る。起きたときのままの状態だったベットを綺麗に整えて着替えをすます。とりあえず仕事部屋に向かって急に空いてしまったこの時間の暇を潰すことにした。
部屋に入って机に向かった。椅子に座ろうと正面の反対側にまわる。

「あれ、こんなとこにいたのかい?」

そこでずっと探していた存在を見つける。床の上で座って寝ているようだった。何故こんな所で寝ているのか分からなくて、起こすためにその身体に触れた。

「……え」

触れた指先は生き物とは思えない冷たさを感じていた。黄色いふわふわだった触り心地は何一つ変わっていなかったのに、それなのに、体温は感じられなかった。


日常からいなくなった

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