小さな雫

抱きしめた肩は小さく震えて子供の様だった。

普段強がって弱さなんて絶対に他人に見せない恭弥。ディーノにも見せたくないと我慢している部分があるのをディーノは知っていた。そこは踏み込んではいけない所で、恭弥自身踏み込んで欲しくない部分だと思っていたのでディーノは気にしないことにしていた。
人には言えない部分があるのは何も不思議なことではなかったからだ。ディーノ自身も恭弥に踏み込んで欲しくないことは少なからず存在していた。
それだからこそ、震えた肩が弱さの固まりだったことに驚いた。

ずっと誰にも言えなくて、ずっと誰にも見せられなかった弱さ。誰も知らなかった事実を打ち明けてくれたことにディーノは感謝していた。悲しい思いをさせたくはなかったけれど、事実を知ることができてよかったとディーノは思った。
これで恭弥の声の原因を突き止めることが出来た。声を失う程に恭弥にとってヒバードの存在は大きくて、その悲しみは深いものだったのだ。

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「貴方なら、ディーノさんならその原因を取り除いてあげられるかもしれません」
「…俺が?」
「はい」

恭弥のもとへ行く、そう言ったディーノの背中を見つめて草壁はそう言った。振り向いたディーノはう〜んと声を漏らし、悩む様に眉間に皺を寄せた。
草壁は何を悩む必要があるのだろうと感じた。恭弥がディーノに出会ってからディーノほど信頼を寄せた人間は他にいない上に、一緒に過ごした人間もこんなにも傍にいた人間はいない。それなのにどうしてディーノが悩むのか分からなかった。

「俺でも駄目ってこともあるぜ」
「! そんなこと…」

ないと思いますよと続けようとした草壁の言葉を遮ってディーノは続ける。

「長いこと一緒に過ごしてて言うのもあれだけどなぁ、俺にも恭弥の分かんない部分と踏み込んじゃいけねぇなって思う部分があるんだよ」

ディーノはそう残して部屋を後にした。

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「っ、」

腕の中で小さな嗚咽を漏らしてしがみつく恭弥。今日の今までずっとためてた何かを吐き出すかの様に繰り返す。
ディーノは胸元に湿り気を感じて、恭弥が泣いてることを実感する。

涙を流して溜めていた全てを出して欲しい。もう一人で抱えないで、一人で苦しむ必要なんて無い。
恭弥が悲しいディーノも悲しかった。

「恭弥…」

呟くディーノも泣いていた。


大切ななにかを失うのは、誰にでも悲しみを与える

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