束縛

おかしいと思った。いつの間にか寝てしまったベットで目を覚ませば寝るまでは自由だった筈の腕や足は全く動かなくなっていた。足は腕よりもまだ動きそうな気がしたのだが、腕は何をしてもびくともしなかった。
声も出なくてついに身体が動かなくなって、

あぁ僕はこのまま死ぬしかないのだろうか。


薄くあけた視界の先の眩しい世界を見つめ恭弥は一人そんなことを思っていた。そのまぶしさはとても明るい暖色系で酷くディーノの髪色に似ていた。死ぬときまであの人のことを考えて死ぬなんて…、とそこまで考えて恭弥はこの状況が変なことに気がついた。
世界は眩しく感じるのではなく実際に眩しかった。視界は見慣れた金髪、それもそうそういない柔らかさを持ち合わせたディーノの色に埋め尽くされていたのだ。

(な、なにこれ)

恭弥は首を動かし状況を見て確認する。見える範囲で分かったことはディーノがなぜか自分にぴったり貼りつくようにして眠っていると言うこと。そして腕が動かない理由はがっちりと抱きしめられているから。
普段一人で眠るベットは二人で眠るとかなり狭く感じられ、思いっ切り動けばディーノの束縛から逃れることができそうであったが、同時に床へダイブする危険性があった。

(仕方ない、もう一度寝よう)

声は出せないままなのでディーノを起こすことは不可能だった。動けば落ちてしまう可能性が高い。そして身動きは出来ない。今恭弥が出来ることの中では最もベストな行動だと思った。
そんなに眠くは無かったけれど頭は完全に覚醒したわけではない。まだ少し睡魔が残っている。瞳を閉じて恭弥は再び眠りについた。

「すー…すー…」

眠りについてから数分たった時のことである。首筋のすぐ傍から聞こえるディーノの寝息は、時間が経てば経つほど恭弥にとって煩わしいものとなっていった。最初は疲れてるんだな…寝かせてあげよう。そう感じたのだが今は少し、煩い。気になって眠れない。呼吸の音ってこんなにうるさかったかな。
そう思えて仕方がなかった。

ぐいぐい

耐えきれなくなってきたので恭弥はついに行動に出ることにしたのだ。ディーノが床へ落ちるのは構わなかったけれど自分が落ちて痛い思いをするのは嫌で、そんな思いから恭弥は少しの力でディーノを揺さぶる。先程やっとの思いで身体の隙間から抜き出した右腕でゆさゆさと揺する。

起きて、ねぇ、早く

声は出せないので心でそう唱えながらディーノの肩を揺すった。

「う〜ん」

ディーノが声を漏らしたので恭弥は期待した。やっと、ディーノが目を覚ましてくれると。目が覚めてからしばらくの間続いたこの、ディーノという愛しい人によって縛られた身体がやっと解放されると思うと嬉しくなった。

「きょーやぁ」

すり、とディーノは恭弥の予想していた動きをせずに擦り寄ってきたのだった。こんなもの望んでいない。
しかしディーノが少し動いた事で先程よりも身体は自由を取り戻していた。
もういいや。そう思った次の瞬間だった。ごつん、ずる、そう音がしてディーノは床に勢いよく放り出された。

「いでっ、な、なん、恭弥っ!?」
「……」
「えっ、なに急にそんなおこってんだよ!!」

恭弥は今から咬み殺す、そういった目でディーノを見下ろした。


嬉しいけどうっとうしいのはいやだ

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