94言えない気持ち。
*でのひば
・例えばあなたをどう想っているか
「俺のこと好き？」
「さぁ？ どうだろう」
・例えばあなたの呼び方について
「ねぇ」
「…恭弥俺の名前知らないんだろ」
「それはどうかな」
・例えばあなたに会えない時の僕
「寂しかったろ」
「あなたはどうだったの」
「恭弥に会いたかったに決まってんだろ」
「そう」
いつだって曖昧にしか返さないけど、本当はあなたのことが好きなんだと分かっている。ちゃんと名前も知ってるし、数日空いただけであなたに会いたいといつだって思ってる。
僕はあなたにちゃんと感情を伝えない。それでもあなたは、僕が好きではない人間と一緒にいたりしないことを知っている。
なにも言わなくたってあなたが久しぶりに会いに来れば隣は空けておく。触れられても拒まない。
それは嫌じゃないから、あなただから。
いつだってちゃんと言えないけどあなたはちゃんと分かっているのだから、それならわざわざ伝える必要はないと思う。
生憎僕はあなたの期待には応えられないだろう。自分に素直になるすべはまだ持ち合わせていない。
まだまだあなたには言えないけど、それまではあなたが感じ取ってくれればいいと思う。
言えない気持ち。
(好きくらい言えよな)
(嫌いじゃない)
(えー)
(ちなみに僕は好きか嫌いの二択しかないよ)
(…ならいいか)
[ 108/115 ]
[←] [→]