綺麗だな、とあなたは言った D←H♀+10

※片想い



「綺麗だな」

ボンゴレの本部があるイタリアからは遥か離れた日本、並盛。そこにある雲雀恭弥の自宅は現代の日本でも珍しい、昔ながらの姿をした自宅に住んでいた。
池を中心に緑が生い茂る縁側。手入れをしていると恭弥の背に突然声が掛けられた。
しかし家には誰も招き入れた記憶はなく、恭弥以外に誰かを招き入れる人間もいなかった。

「こっちこっち」

キョロキョロと周りを見渡しても見つからない人影。上から聞こえた声に首を今までより上に向けると、塀からひょっこり出た眩しい頭を見つけた。

「跳ね馬」

恭弥はそこにいる人物を見つけるとそう言った。ディーノは外から塀を挟んで恭弥に声を掛けたのである。

「何してるの」
「ん、日本来たから寄ってみた」

ディーノは昔から変わらない笑顔で笑う。それに恭弥の心臓が重く跳ねた。それは恭弥を少しだけ緊張させて、少しだけいつもとは違う変化をもたらす。

「そう」

それ以上どう会話を発展させて良いのか分からず、恭弥はそれしか言わなかった。

「恭弥の家の庭は本当いつ来ても綺麗だよなぁ」
「…お世辞を言っても何も出ないよ」
「お世辞じゃねーよ。いつも言ってんだろ?」

確かにディーノはここを訪れる度に同じことを口にしていた。いつだってそれは縁側を誉めることばかりで、それは嘘とは思えない。

「毎回言われると信じられないからね」

でもだからこそ恭弥はこう思うのだった。ディーノが嘘を口にしていないとは分かっていても、だ。

「恭弥は美人だけど厳しいな」
「今度は僕自身のご機嫌取りかい?」
「そうじゃねぇよ! 損してるってこと」
「得をしたいとは思ってないからね」

恭弥はこの言葉通り自分を偽って得をしようと考えたことはなかった。自分の態度を知って嫌いになりたければ勝手になればいいし、偽りの態度の女が好きならばそれが叶う女の元へ行けばいいと思う。

「恭弥は結婚しないのか?」
「興味がないね」
「綺麗なのにもったいねぇな」


あなたの隣に僕の居場所はない。あなたの傍には僕のよく知らない女の人がいる。
綺麗でもあなたが好きになってくれないなら、意味なんてない。もったいないなんてこともない。
それなのにあなたは僕に綺麗だと言うから、僕は得をしないのにあなたの言葉欲しさに努力を惜しまないのだ。



綺麗だな、とあなたは言う。

けれども好きとは言ってくれない。
あなたの傍にいるあの人がいなくなることばかり願う僕は、本当はちっとも綺麗なんかじゃなくてとても醜い人間だ。



(2011.05.23)

[ 10/115 ]


[] []



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -