98身の程知らずの人魚姫**+10

*での←にょひば+10


ずっとずっと好きな人がいた。ずっと前に出会った人。初めて会った時から眩しいほどの金色を揺らして、これまた眩しいほどの笑顔で笑っていた。
僕にはないその人の全てに一瞬にして視界を奪われ世界を奪われいつしか心まで奪われた。
強くなるのは自分のため、それがあなたの喜ぶ顔が見たいからと変わるのにはさほど時間は掛からなかった。あなたに勝ちたくて咬み殺してたはずなのに、いつしかあなたと戦いたい気持ちの方が勝ってた。あなたに緊張せずに近づけるのは戦ってる最中だけ。
あなたに気が付かれずに近づけるのはそんな時しかなかった。

僕はあの人との関係を壊したくなくて、好きなんて一度も伝えられなかった。興味を無いふりしてあの人の部下に尋ねたら、恋人はいないけどずっと仲良くしてるお嬢さんがいてな、と言われてしまった。
興味が無いと言っておきながらその相手が気になってあれこれ聞いてしまったら、僕は興味もない相手のことを沢山知ることになってしまった。そんなやり取りをしていた僕らに気が付くとあの人はすぐに部下の名前を呼んだ。少し大きなそれに僕はびくりと驚いてしまった。
あの人の部下といえば「少し喋りすぎたみたいだな」とあまり反省してなさそうな顔で言っていた。あの人はすごく何とも言えない顔をしていて、ごめん、とだけ呟いた。
僕はこれがまだ言ってもいない告白の返事な様な気がしてしまい、その場では興味無いよと返しながら随分とショックを受けた。聞かなきゃよかったと。

それからはあなたのことを考えるといつだってその女の人のことがちらついた。
いつだって僕の思考の中のディーノは一人じゃなかった。あなたの隣には今もあの女の人がいるの?
どんな人なの、どんな感じの人なの。

そればかりが気になってしまう。そして鏡で自分を見る度にため息ばかりが漏れた。

きっとあの人と仲の良いお嬢さんはきっと可愛いのだろう。僕よりもっと女らしいのだろう。
僕みたいに無愛想でなければ柔らかく微笑み、柔らかな物腰で会話を交わすのだろう。染み出る上品な様はきっとよく似合っているはずだ。
僕は動きやすいスーツばかりを着用するけれど、彼女は可愛らしい服を着るのだろうか。あの人の好みすら分からない僕が知りえない、あの人が好む洋服に包まれたりするんだろうか。


そんな風にただあの人に気が付かれないようにすごして10年が経ってしまった。
今日の任務はボンゴレの同盟ファミリーのパーティーの護衛だった。参加者は男女ペアではないといけないらしく、会場に集まる人々は皆二人組だった。歩きにくいのでは無いかと思うくらい腕を絡ませたまま会場へとやってくる。見てるだけでもあまり良い気分ではなかった。
そしてそんな時、僕の気分をさらに悪くさせる人物が現れた。あの人だ。

真っ白な目を引くスーツに隣には綺麗な人を連れて。会場に入った途端あの人は誰かに呼ばれ挨拶に向かう。隣の人は女の僕から見ても綺麗だと思う程に整った顔をしていて、日本人にはない薄い色素の長い髪は柔らかなウェーブを描いていた。促されるままに挨拶をする姿はすごく様になっていて、二人はあっという間に会場の人の目を集めてしまう程にお似合いだった。
若いからか、冷やかされて少し照れるあなた。一言二言返すそんな姿に視界が奪われる。




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