ありがとうと、よろしくね

ディーノと付き合い始めたのは三年とちょっと前。

今までの自分を考えてみると随分と長い付き合いに感じられ、それは奇跡の様にも思える。奇跡と思えてしまう程に、ディーノという存在に僕は心を許してしまっているのだ。
去年は例年と変わらず二人一緒に過ごすことなく、僕は一人で年越しを過ごしていた。特にやることもなく、一人なのでただ一日中テレビを付けっぱなしにして、こたつに入ってそれをただなんとなく眺めていた。
はっきり言ってそれは寂しくて虚しい気持ちにもなったけれど、僕は素直になれなかったのだ。

初めて誰かと付き合って、初めて誰かと年越しを迎えるかもしれないという時、僕は素直にディーノに一緒にいたいと言えなかったのだ。一緒にいたいという気持よりもどうしても群れは嫌だな、という気持ちばかりが先行していたのだ。
その考えが僕に寂しいお正月を迎えさせることになるとも知らずに。

けれどそれも一年目の時は耐えられたのだ。ディーノとつきあい始めたばかりだったということもあってか、僕はさほどディーノのことを意識せずに過ごすことが出来た。三が日が過ぎればまたディーノはやってくる。
そう分かっていたからだ。去年も大丈夫だったんだから今年も平気、そう思って一人で過ごすことを決めたのだ。
そして気がつけばこたつで年越し。祝いだと騒ぎ立てるテレビの画面に映る沢山の群れは普段であれば群れなど見ていても楽しくも何ともないのに、この時だけはテレビを消してしまうことは出来なかった。
これが唯一の音声発生源だったのだ。静かに一人過ごす部屋の中での唯一人の声を発するものだった。

二年目のお正月は今思い返すととてもつまらなかった。
テレビでカップルを見れば思い出すのはディーノのこと、寂しくて会いたくてなにも手に付かなかった。その結果僕の生活はびっくりするほどだらけていて、寝起きもこたつ、一日中部屋着で過ごすという女の子らしからぬ生活だった。
けれどそれも誰も見ていない。部屋は僕の心のふてくされ具合を表すように荒れていった。

そんな状況の時、ディーノはまさかの元旦に家を訪ねてやってきたのだ。寝癖が付いていなかったのに付いてるとからかわれ、汚したままの部屋も部屋着も見られてしまったのだ。
僕はその時ディーノに会えた嬉しさから全てを気にすることが出来なかったが、今年一年その時のことを度々口にされるので、今年の正月は僕の中で忘れられない記憶となった。

けれどそれも今年までの話であって、今年僕はディーノについてイタリアに行くことにした。ディーノのファミリーには僕とディーノが付き合っていることはすでに周知の事実となっているし、ファミリー内のパーティにもすでに参加したことがあった。
今年も断られるんじゃないかと緊張した様子を見せるディーノを僕はあっさりと受け入れたのだ。




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