ふわふわときらきら

ふわふわ、

きらきら、

風が吹くと揺れ、太陽の光が当たるときらりと光を反射させる。四方八方に跳ねている様で、寝癖の様なだらしのないものではなく、なにかしらの規則で整えられたそれ。

それ、が恭弥は好きだった。

跳ねる毛先に触れて見たいと思うからだ。しかし反射する光は時には眩しすぎて、その光そのものもが眩しいのかディーノが眩しいのか分からなくさせる。
恭弥にとってディーノはいつでも眩しかった。くるくる変わる表情は決して真似することの出来ないものだろう。笑顔になるどころか、恭弥が表情を変えること自体が滅多にない。恭弥にとって表情は必要のないものだったのだ。
群れることを嫌い、人との接触を拒む恭弥にとって見せる表情もなければ、作る表情も無かった。笑ってもなければ泣いてもいない、怒ってもいない、悲しんでもいない。そんな顔がいつしか恭弥の普段の顔となってしまったのだ。

そんな恭弥にはディーノが眩しすぎて、触れたいと思うのに触れられないのだ。あのふわふわできらきらとしたディーノの髪に。


「恭弥は本当にヒバードばっかだよなぁ」

少し呆れる様にそう言ったのは応接室のソファーに座るディーノだ。この部屋では恭弥は自身の机に、ディーノはソファーが互いの定位置だった。そのためディーノはいつも客人用のソファーに座り、少し離れたところにいる恭弥のために横を向いて話さなければならなかった。
しかしそんなことはディーノにとって大した問題ではない。並盛全体で恐れられる、恭弥のいるこの部屋に客人用のソファーがある方が気になっていることだった。

「この子は可愛いからね」

ディーノの質問に視線は変えず、恭弥が答えた。恭弥といえばさっきから自分の指に止まったヒバードを撫でてはやめ、やめては撫での繰り返しだった。頭の上の方の手触りが特にお気に入りで、その部分ばかり指でつまんだり、そのまま上へ引っ張ったりばかりをしていた。
ディーノは恭弥のこの行動がヒバードへの好意から来ていると思っているが、実はそれだけではなかった。それは半分くらいで、他の理由が半分くらいだ。いや、最近は6割くらいその理由に傾いて来た。

その理由がディーノの持つふわふわできらきらした髪の毛だ。触らして、なんて言えるはずもなくヒバードでそれを発散しているのだ。

「そうやってる間、俺は暇なんだけどなー」

ディーノは子供の様にむくれて言う。けれど恭弥がディーノのいる時でも気にせずヒバードばかりを構うのは、いつものことだった。ディーノが知らないだけで、この行動はディーノがいる時の方が多い。
それだけ恭弥はディーノの髪の毛が気になっていて、触れたいと思うのだ。しかし自分らしくないという思いと、ちょっとしら自分のプライドがそれを邪魔する。出会った当時より、恋人同士になった今の方が感情を露わにする様になった。でもそれも以前に比べれば、である。
まだまだ恭弥にはディーノに言えないことも、知られたくないことも沢山ある。そしてディーノが恭弥のことで気が付かないことも沢山ある。

ディーノは恭弥がヒバードばっかり構っていても、自分を邪魔だと言ったり帰れと言わない理由を知っているのだ。邪魔だとは思っていないし、帰って欲しいとも思っていないと分かっているのだ。ただ、ヒバードにばかりになってしまう理由の半分くらいを知らないだけで。


**


「あなたまた来てたの、」

それから2,3日が経った日のこと。ディーノは今日も応接室にいた。というより来ていた、のだ。
恭弥が委員会の集まりをして、風紀委員としての校内巡回を終わらせて戻るとディーノが部屋にいたのだった。
しかし恭弥が声を掛けても反応はなく、ディーノはソファーに横になったままだった。

「スー…」

近付けば静かな寝息が聞こえ、寝ているということが分かる。ここに来たものの寝ているというその状況に、恭弥は怪訝そうな顔を浮かべた。寝てしまっては何をしにきたのか聞くことも出来ず、それを知ることも出来ない。

「あ、」

しかしチャンスだった。そのことに気が付いて恭弥は短く声を漏らしたのだ。
これはディーノの髪に触れる絶好のチャンスなのだ。

ちょん、ちょんちょん

目覚められてた困るので、まずはそっと近づき跳ねる毛先に触れた。指先でその先を押して離せばぴょん、と跳ね返ってくる。思った通りの弾力に数回繰り返せばちょっと楽しくなってくるが、それもすぐに飽きてします。
一度手を休めてはディーノがまだ起きていないかの確認をする。顔を覗き込んで目が閉じていること、寝息が変わらないことを確認する。まだ大丈夫だった。

するり、とふわふわと波打つ髪の毛に指を滑り込ませる。思っていた異常に傷んでない髪は滑らかに指を走らせ、絡むこともない。自分にはない色ではあるが、髪の毛ということが同じである様に、色以外のものはほとんど同じだった。
根元が見える様に少しめくって、その髪が人口の色なのかを確かめる。ディーノの髪は根元から変わらない明るい蜂蜜色をしており、それが人口ではなく天然のものだと分かった。つまりこのディーノの色は生まれつきの色なのだ。
そこまで確認すると恭弥は触ることに専念する。上から下へ手ぐしを通しては指に巻きつけてみたり。

「委員長、」

部屋の外、閉じたドアの向こうから草壁に呼ばれる声がする。ぴたり、恭弥の指は止まった。

「なに」
「ちょっと確認したいことが」
「今行く」

ディーノが起きていないかもう一度確認すると、恭弥はそのままドアに向かって歩いて行った。ディーノを起こさない様に、と応接室を出るとドアを閉めてそのまま草壁の話を聞いた。

ふわふわときらきら
(やっぱりふわふわだった)
(お、俺起きてたんだけど…、)

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萌子様フリリク
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