MELLOW MELLOW *♀

*MELLOW LOVE 続編

今から少し前、俺と恭弥の間にもう1人家族が増えた。それはファミリーであって、マフィアのファミリーとは少し違うものだ。増えた家族は俺たちと血縁の者で、一般的に言う娘というものだ。
恭弥のお腹が膨らんでいたのは数ヶ月前のこと。少しずつ大きくなるそれに、毎日密かに心を踊らせていたのは言うまでもない。俺は毎日生まれる日を楽しみにしていたのだ!


出会った時から恭弥は難しい奴で、気持ちを伝えるのも一苦労。付き合ってくれ、とちょっと濁せば「どこまで?」なんて見当違いの答えが返ってきた。懐かしい思い出だ。そうゆうことじゃねぇ、と真っ先に思ったが呆れて言葉が出なかった。
恭弥には感情を直接伝えないと伝わらないのだと、その時ほど強く思ったことはない。同時にそれまでの緊張感がなくなり、好きと言いやすくなったのは幸いだ。しかし付き合うまでに一難あった様に、付き合い出してからもそれは変わらなかった。
しかし時間が経てば恭弥も俺を理解してくれる様になり、俺も恭弥の感情が感じ取れる様になった。怒っている時に顔にはでない僅かな癖や、些細な変化やそういった諸々にだ。
恭弥の妊娠中は、仕事中に恭弥に会えないことが気になって仕方がなかった。恭弥の変化に気が付けるのは側にいたからであって、仕事中はそれを出来ない。心配しすぎ、だなんて恭弥は笑って言ったけど、俺にはそれくらい恭弥が大切だった。
同時にお腹にいる三人目の俺たちの家族も。産まれてもない我が子も恭弥のことも大切に思うから、どちらも失いたくなかったのだ。

そんな日々が一年近く続いたある日、ついにその子は生まれた。生まれた日はつい昨日だった様にも感じるのに、生まれた日から今日で一ヶ月が経とうとしていた。

「は〜、可愛い」
「あなた仕事は?」
「今は休憩」

キャバッローネにある一室、そこにあるディーノの仕事部屋の隣の部屋は今や恭弥が昼間過ごす部屋となっていた。それはディーノが生まれたばかりの娘を気にするあまり、すぐに様子が見にいけるようにと設けられた二人の部屋だ。元々は客間として使われていたが、今では客間の方が別室に用意されているくらいである。
そんな恭弥と娘の過ごす部屋にディーノがやってきたのは、今日だけでも3回目のことだ。ディーノは一直線にベビーベッドへ向かい、中を覗き込んでる。

「休憩って…一時間前にも同じことを言ってたよね」

恭弥は度々やってくるディーノに呆れを含めて言った。ディーノは一時間前にも休憩と言って、同じ様にこの部屋にやってきたのだ。その数時間前も同じだった。
ディーノはボスであり、元々仕事中にこまめに休憩を取る人ではない。むしろ取れないはずだ。それなのにディーノは、かなりの短い間隔でこの部屋を訪れている。聞けばいつだって休憩、とその二言だ。

「寝ちゃったのか、残念だなぁ」
「あなたと遊んで疲れちゃったんだよ」
「じゃあ寂しかった?」

見上げる形で視界に入れたディーノ。そんなことを言われるとは思っていなくて、真正面でそんなことを言われた恭弥はほんのり頬が熱くなった。表情を変えたくはないのに見つめれば見つめられるほどに、熱は上がっていく。
こんな風になるのは久しぶりにことだった。付き合い始めた頃にはよくあったこと、それでも最近では照れたりすることはほとんど無くなった。

「恭弥赤くなってる」

息を漏らす様にディーノが笑って、そのまま触れられた頬はディーノの手を冷たいと感じるくらい熱くなっていた。

「…あなたのせいだよ」

恭弥がそう言うと、ディーノは「そんな顔で言われたら仕事に戻れなくなるだろ」と幸せそうに笑った。台詞と表情は噛み合っていないのに、あまりにも嬉しそうに笑うので恭弥もそれにつられてしまう。
こんなやり取りは久しぶりだった。恋人だった2人に戻った気もした。
しかし直ぐに聞こえた我が子の声に、もう恋人ではなく家族になったのだと感じることになる。目が覚めてぐすりだす我が子を抱きしめるディーノを見ていると、今がたまらなく愛しく思えた。


あなたと家族になれたことがただただ嬉しくて、愛しくて、どんな時も幸せと感じることが出来るのだ。


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やよい様フリリク
ご本人様のみお持ち帰り可能です。

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