可愛いあの子たちは今日も

雲雀恭弥の一日は愛らしい二匹の世話から始まる。群れるのは嫌いと言いつつも偶然に出会ってしまったヒバードとロール。出会った時から変わらず、二匹は恭弥のお気に入りだった。
そして二匹は恭弥にとってペットではなく、家族だった。朝おはようと声を掛ければ、ヒバードはおはようと返してくる。ヒバードは言葉の覚えられる優秀な鳥なのだ。ロールは言葉には出来ないものの、可愛らしい鳴き声と行動で感情を示してくれる。
そんな二匹を連れて学校に行くのも、今では恭弥の日課となった。

***

「ほら、ご飯だよ」

昼休みも恭弥は二匹と一緒にご飯を食べる。それはディーノがいる時も変わらず、その世話は今ではディーノも一緒にすることになっている。今日はディーノがロールを、恭弥がヒバードの担当だ。

「うわっ、ちょ、刺すなよ!」

普段は静かな食事時、応接室にディーノの悲痛な声が響く。それは恭弥の向かいのソファーに座るディーノの声だった。何をしているのかと思えば、ロールは背の針を思いっきり立ち上がらせている。どうやらディーノはロールを怒らせたらしい。

「あなたなにしたの?」
「いや何って、こういつもの様にだな」
「ロールは理由もなく怒ったりしないよ」

恭弥の言う通り、ロールは理由なく怒ることはない。ただ、性格が穏やかなヒバードに比べたら気が短いだけで、それでも突然怒ることなんて今までなかった。だからきっとディーノがなにかしたのだろう。
それは悪戯程度のものだったのかもしれないが、ロールを相当怒らせる結果となってしまったらしい。現にヒバードはロールを慰める様に周囲を迂回したが、ロールにはディーノという一点の敵しか見えていない。

「いってぇ!」
「ロール、こっちおいで」

ディーノは伸ばした掌を刺された様子だったが、恭弥はそれよりもロールのことが気になって仕方がない。ディーノの手元にあったちくわでロールを引き寄せれば、勢いよくそれに噛り付いた。
食べ始めればその怒りは少しずつ治まっていき、数分もすれば幸せそうなオーラに包まれ「美味しい?」と恭弥が聞けば、嬉しそうに鳴き声を上げた。

「うう…俺のことは無視かよ」
「あなたやっぱりなにかしたでしょ。焦らしたりしなかった?」
「じっ…! 知らねぇな」
「どこ見て言ってるの」

手を摩りながら、ディーノは恭弥から視線を反らした。恭弥の予想は大体当たっていた。

ことの真相はこうだ。
あまりにもロールの食い付きがいいのをディーノが面白いと思い、ロールの前でちくわをちらつかせては遠ざけ、ちくわが近付けば食べようと反応するロールで遊んでいたのだ。はじめは僅かな距離でロールも食事にありつけることができた。
しかしディーノはそれでは面白くない。食べてる最中にちくわを引っ張り、ロールを軽く引きずってみたり、食べる直前に引いて飛びつくロールを空振りさせたりしていたのだ。
はじめの数回はロールも状況を飲み込めず、もう一度と飛びついて来た。しかし二回三回と繰り返し失敗が続けば、異変に気が付く。ディーノがやっていると気が付くと、怒りを露わにディーノに飛びついたのだ。

しかしそれもこれも全てはロールが反応含め、可愛くて仕方なかったからである。二人でいる時に恭弥がヒバードやロールばかりなってしまうのも仕方ない。それほどまでに二匹は愛らしかった。

「きょーやごめん! ついロールが可愛くてさぁ・・・」
「可愛くても、可哀想なことしないで」

ディーノのいない時も二匹は恭弥の側にいて、恭弥は二匹の世話をする。それはディーノがいても変わらない日課だった。ディーノがいなくても寂しさを感じないのは、二匹のおかげでもあるのだ。


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