La mia sposa.-2

「恭弥今日はどこに泊まるんだ? 送ってくぜ」
「なに言ってるの。ホテルなんて何処も取ってる訳ないでしょ。泊めてよね」

突然の恭弥の訪問の後、ディーノは残りの仕事を片付けるために仕事に戻った。数時間の間、恭弥は前に来た時の記憶を頼りに屋敷の中を歩き周った。
古い建物であるせいか、一年の間に中身がガラッと変わるということは起きていなかった。そのまま、あの時のままに懐かしさを思い出す。
前回初めてここに来た時は知らないファミリーが沢山居て、言葉もまともに話せる自信も無かった。元々自分から話しかけに行くタイプではないこともあり、滞在期間中は殆どをディーノに付いて過ごした。
しかしそれも過去の話であり、今は話しかければ反応出来るくらい言葉も理解出来る。ディーノの仕事が終わるまでの時間はそんなに退屈することなく過ごすことが出来た。夕食時、ディーノは仕事中から気になっていたことを問いかけた。
急な訪問、即行動タイプの恭弥でも今晩の寝床ぐらい用意しているのだろうと思ったのだ。本音を言えばこのまま泊まって欲しかったが、それは今後でもいいかと今日は諦めることにした。
したのだが、恭弥の答えはディーノの考えていたものとは違っていた。

「え?」
「今日は泊めてよ。僕はこっちじゃここしか知らないもの」

恭弥は当然の様に言い放った。こうしてこの言葉がきっかけとなり、恭弥はこの日からディーノの所に滞在することになった。


年末になり、ボンゴレの本邸で十代目とその守護者達のお披露目パーティーが行われた。お披露目と年末のパーティーが一緒になったそれなりの大きいものだ。キャバッローネ以外にも同盟のファミリーが集まっている。パーティーの後、守護者にはそれぞれの部屋と仕事に必要な部屋や部下が割り当てられ
る。当然それは恭弥も同じで、ボンゴレの屋敷の中に恭弥も自分の部屋を用意されていた。ボンゴレに部屋を用意されたと言うことは、この先の生活の場所を与えられたと同じことだ。
これからはそれぞれに仕事も与えられ、恭弥がディーノの元で生活する理由は無くなってしまった。お披露目のパーティーが終わり、ディーノはロマーリオの運転する車に乗り込んだ。

(もう少し遅くても良かったのになぁ)

今だからこそ思えるそんな我が儘に、ディーノはちょっと前の憂鬱な日々を思い出した。あの頃は早くこの日が来ればいいと思っていた。屋敷に着いて部屋に戻ればもう恭弥はいない。恋人という関係は何も変わっていないのに寂しかった。

「遅かったね」
「あぁ、…って、なにしてんだ恭弥!」

掛けられた声についいつもの様に反応してから、ディーノはそれが可笑しいことに気がつく。恭弥とはボンゴレで分かれ、ここには一人で戻って来たはずだ。それなのに

「なにって、帰って来ただけだけど?」

驚くディーノをよそに恭弥はなにを言ってるの? という態度だった。あたかもこれが当然であるかの様に。

「お前あっちに自分の部屋もらったろ」
「勝手に与えられただけだ。僕は自分で手に入れたもの以外は必要ないよ」

恭弥らしい理屈だった。しかしそれは屁理屈だ。そんな理由でファミリーの人間が違うファミリーの人間の所にいることが許されるのだろうか。いや、許されないだろう。

「そう言うんじゃねぇよ、戻れって」
「やだ」

つーん、と効果音が似合いそうな程に恭弥は剥れ、視線を反らす。ディーノが思わず、可愛いと思ってしまったのは条件反射だ。

「ったく、今日はいいけど明日はちゃんと戻れよ?」
「やだ」

恭弥は頑なにディーノの言葉を拒んだ。恭弥はボンゴレのファミリーであっても、生活をここからボンゴレに移すつもりは無かった。部屋と言っても勝手に用意されて勝手に与えられたものだ。
恭弥の趣味でない部分も多くあり、なによりも一番なくてはならないものがそこにはなかった。一番傍にいて欲しい人がいなくて、前よりは楽になったと言っても容易に逢える距離ではない。散歩ぐらいの気持ちで逢いに行けるなら別だ。
だから恭弥は部屋を受け取っても、そこに生活を移すつもりは無かった。身勝手だとは思っても、ここでは生活出来ないと綱吉にはすでに伝えてあった。

「困るだろ?」
「誰が」
「ツナがだよ」

恭弥が折れない様にディーノも折れない。もちろんディーノ個人としては恭弥がここにいることに反対する理由はない。しかしそれはディーノが個人的に思うことであり、ファミリーのボスとしての意見ではない。ボスとして言うならば恭弥はここで生活するべきではないのだ。

「もう言った」
「…なにを?」

恭弥の短い返事では何のことなのか分からない。

「部屋はいらないって。こっちにいるってこと」

なんて身勝手なんだろうと思うと同時に、嬉しいと感じてしまう感情がディーノの中にこみ上げる。それでもやっぱり納得させなきゃ駄目だという思いが強く、ディーノは恭弥を受け入れることが出来なかった。

「恭弥、駄目だ。迷惑掛かるだろ」
「あなたはそれでいいの?」
「――それでいい、と思ってる」

ぎゅっと力を込めた拳に爪が食い込んだ。ディーノは大人である自分が我慢をするべきなのだ、と考えていた。こんな風に恭弥を縛り付ける枷に自分がなってしまってはいけないと。だからここで離さなきゃいけないと。

「もういい」

一言、静かに言い残すと恭弥はディーノの部屋を出て行った。ディーノの部屋を出た恭弥だったが、その日はそのまま帰る訳にも行かず、客室の一室に部屋を用意してもらった。イタリアに来て初めて一人で眠るベッドは多すぎる上に、寒くてよく眠れなかった。腹が立って、部屋から出るのも嫌になって恭弥は、目が覚めても部屋から出ることはなかった。極力を寝て過ごしてディーノとの出来事を忘れようとした。



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