あなたって先生だったの、

※2011.12.05 ねたばれ







「よ!」

校内ではすでに見慣れた存在になってしまった部外者、ディーノは応接室に入るなり恭弥に声を掛けた。
それに普段ならまたか、とうんざりしつつ答える恭弥だったが、今日は言葉に詰まってしまった。それは部屋のそばに立つディーノが見慣れた存在であるはずなのに、見慣れない服装で立っているからだ。
普段だったらパーカーやラフな服装でシャツを着て来ることは殆どない。シャツであるならば大抵がYシャツであり、そしてスーツであるのが当たり前だった。それなのにどうだろうか。
今日のディーノは普段では着ない様なカラーシャツにベスト、柄の入ったネクタイにスラックス。それだけでなく、目は良いはずなのに眼鏡も掛けていた。
眼鏡はレンズが大きく、端には小さな星があしらわれている。子供っぽい、思わず今恭弥はそう思ってしまったが、それなのにディーノが掛ければそんなのは気にならない。視線はディーノに向けたまま固まってしまった。

「あれ?」

部屋に入ってからずっと黙ったままの恭弥に、ディーノは疑問に思い声を出した。それでも恭弥は何も言うことなく、ただじっと視線を向けるだけだ。
機嫌が悪くなった様子もなく、ただじっと見つめるだけを恭弥は繰り返す。

「もしかして、恭弥俺のこと分からない?」
「跳ね馬、でしょ」

これで分からないと言われたらなんかショックだなぁ、と思いつつ話掛けたディーノだったが、恭弥の返事は思った以上にすぐだった。分かってはいるらしい。けれど視線は固まったままだ。
慣れた相手であることは分かっているのに、それなのにディーノの格好はあまりにも普段と違っていたのだ。知っているのに知らない人の様で、それが恭弥の視線を固まったままにしていた。

「その格好なに」
「俺先生だからさー」

相変わらず口以外を動かす様子のない恭弥に、ディーノは悩む。恭弥のこの反応は予測していなかったのだ。恭弥ならこの格好に何か言うと思っていたし、先生という存在であることにも認めないだとか冗談はやめろとか言ってくると思っていたのだ。
しかし恭弥はそれをしない。しかもこの様子。あれ? と疑問ばかりがディーノの頭に浮かんだ。

「新任ってあなただったの?」
「…知らなかったのか?」
「興味ないからね」

ディーノは自分が教師としてやってくることを、恭弥が知らなかったことに驚いた。自分で並盛の法律、ルールという在になっておきながら、教師にはあまり興味がなかったらしい。

「それよりも」
「うん?」
「あなたって本当に先生だったんだね」

知らなかった。続けて言いながら椅子から立ち上がる恭弥が、普段しない様な表情で笑うから、ディーノはなにも言えなくなってしまった。


少しだけ、嬉しそうに見えたのだ。

あなたって、先生だったの
(恭弥どこ行くんだ?)
(どこって、屋上でしょ。相手してよ)
(いや、先生はそんな暇じゃねぇんだよ…)
(やだ)



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