衝撃のバズーカ *♀
それは予想もしていないことだった。
恭弥に会いに来たのに、顔が見えたと思った直後に何らかの銃口を向けられる。それは銃、というには大きすぎる弾の発射口を持っていて、頭の中に"バズーカ"の文字が浮かんだ。
バズーカ? なんて思う暇もなく俺はそれに撃たれ、辺り一面真っ白になった。それもまた一瞬のことで何が何だかさっぱり解らなかった。
理解出来ない状況に薄れ始めた煙にようやく視界が広がっていく。
「ディーノ?」
後ろから誰かに呼ばれる声がした。それは俺が知ってる声、忘れることはないあの子の声だった。
少し大人びて聞こえた気もするが、あまり気にせず振り向いた。
「……、」
振り向いて視界に入った人物に言葉を失う。
「どうしたの、昔みたい」
くすり、やけに色っぽく笑うその人は、その女性は恭弥なのか俺には解らなかった。でも多分そう。なんとなく。
曖昧な考えが頭に浮かぶ。
「普段はこっちを耳に掛けているでしょう?」
また色っぽく笑うもんだから、俺の心臓はびくりと跳ねる。しなやかな手付きで顔の横に手が来たと思うと、左側の髪を耳に掛けられた。
俺は普段髪を耳に掛けたりしない。じゃあこの人の言うディーノって誰なんだ。
こんな大人っぽい恭弥…なのかは分からないけど、俺は知らない。
「あれ、本当に昔のディーノだ」
恭弥の言うことは訳が分からない。昔? 俺は今存在している。でもこの恭弥は?
「昔って、」
「あなた覚えてないの? 僕にバズーカ向けられたことあるでしょ」
今さっきの出来事なのに、目の前の恭弥は過去のことの様に言った。
過去?
…となるとこれは未来なんだろうか。未来と考えるなら恭弥の姿にも発言にも納得がいく。
「十年後の未来に飛ばされたんだよ」
「…なんで?」
「当時の僕が未来のあなたを見たかったから」
? もう訳が分からない。
「にしてもあなたってこんなに喋らない人だったっけ」
「わぁっ」
そう言うと恭弥は凄く近い距離で俺を見つめた。あまりの近さとその色っぽさにばくんばくん心臓が早くなる。
視線は目を合わせられなくて下に向けたのに、そこには恭弥の、成長した胸が、
…なんではだけてるんだよ。
「聞いてる? …どこ見てるの変態」
「ちちち、違う! そんなんじゃなくて!」
あぁ、もう駄目だ! なんだこれ!
好きな子の胸見てどきどきするなんて、鼻血吹きそう!
慌てる俺とは違い恭弥は凄く落ち着いていて、そして何だかすごく挑発的な笑顔で見てくる。
うわ、可愛い。いやそんな場合じゃなくて、
「触ってみる?」
俺はこんな恭弥知らない!
(2011.04.06)
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