ぐんぐんバズーカ *♀

ただの興味本意だった。

赤ん坊から撃った人間を数分の間だけ未来のその人と入れ換えられる。そんなものがあるという話を聞いて見てみたくなったのだ。
あの人の未来を。本当は未来のあの人を見たかったんじゃなくて、未来の僕らを知りたかったのかも知れない。その時に僕にそんな自覚は無かったけど。



「あれ?」

ぼわん! と煙がたちまち広がって、ディーノはあっという間に消えてしまった。
赤ん坊から聞いたバズーカを持ってここに来たのは数分前のこと。ディーノが現れるや否や、僕はディーノ目掛けてそれを撃ったのだ。
しばらくして煙が引くと、あの人と同じ色を持つ髪の男が現れた。

「恭弥…?」

男は僕の名前を呼んだ。どうやら相手は僕の知り合いらしい。
じっと見つめるとディーノに似ていることが分かる。同じ色を持っていて、同じ服装。髪型は今とは少し違っていた。

(これが未来のディーノ…?)

「えーと…恭弥、だよな? 俺のこと分かるか?」
「…ディーノ」

思い付く名前を口にした。すると目の前の男はそうそう、と頷いた。どうやら未来のディーノに間違いないらしい。

「なんか恭弥小さくねぇか? 髪切ったのか?」
「切ってない。僕は伸ばしたことないよ」
「へ、…あーなるほど。理解した」

ディーノを一瞬驚いた顔をしたけど、視線の先に何かを見つけると途端に理解したと言う。視線の先は床に転がったバズーカに向いていた。
未来のディーノはバズーカを知っている様だ。

「なにが、」
「ん、恭弥バズーカ使ったろ。そういや十年前にやられたの忘れてたぜ」
「十年前?」
「おう。あれは十年バズーカだからな」

へぇ。十年。
ディーノの説明で何年後の未来なのかを始めて知った。赤ん坊はとにかく面白ぇもんがあるとしか教えてくなれなかったのだ。

「で、どう?」
「どうって?」
「未来の俺が見たかったんだろ?」

そこで考える。僕は未来のディーノを見たかったのかどうか、興味があったことのはずなのに特に思うことは無かった。

「分かんない」
「分かんないって…!」

見たいと思ってたのに、こんなもんか、ぐらいしか僕は思わなかったのだ。
変なの。

どうしてそう思ったのかは分からなかった。

(2011.03.24)

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