何様俺様雲雀様
「で、何しに来たの」
その日恭弥はすこぶる機嫌が悪かった。
「き、恭弥?」
名前を読んでも視線を向けられ、ジロリと睨まれるだけだった。
普段は礼儀を気にする恭弥はどーん、という効果音が似合いそうなほどにふんぞり返り、向かい合わせになったソファーに挟まれたテーブルに足を乗せていた。
腕を組んで、何かに腹を立てている様子だ。
この時点でおかしい。その事実にディーノももちろん気が付いていた。
しかしその理由が分からなかった。ディーノが並盛を訪れたのは久しぶりのことで、恭弥から呼び出しが掛かったからという訳でもない。
ならばこの態度の理由は何なのだろうか。
「恭弥〜…」
「……」
呼んでも返事はない。
「足下ろそうぜ、行儀悪いだろ」
「はっ」
「…。」
(超見下した目で見られた!)
ディーノも困惑してしまうほどに恭弥の態度はおかしかった。前から少し俺様というか、ジャイアニズムな所はあった。しかし今日の様に理由もなく腹を立てたことはない。
見たことのない態度から、今日は相当頭にきているらしい。
「今日は何日」
「へ、」
急に言われてなんのことかディーノにはさっぱり分からない。
「何日なの」
ただでさえ低いトーンで聞かれたというのに、再度尋ねるその声はさらに低さを増していた。
ちらり、カレンダーを視界に入れる。
「20日、です」
「そう」
ディーノは教師に説教をされて、何も言えない生徒の気分だった。向かいには教師さながらの恭弥、そしてディーノの膝に乗せられた拳は左右共に嫌な汗をかいていた。
今この場には強さとは別の恐怖があった。強さなら恭弥よりもディーノの方が勝っている。そんなことはディーノにも分かりきっていることだ。
「一週間」
「一週間?」
恭弥が言ったその言葉の示すものが分からない。
一週間、そのキーワードの示す先を知るためにディーノはまたカレンダーに視線を向けた。一週間前、それは14日。
3月14日。
その日付にあれ、と気が付いた。
「ホワイトデー?」
お礼は3倍返し。(忘れるなんて最低!)
(いたっ、あいたっ)
(ばかばかばか!)
3倍返しと言うから後日チ□ルを3個あげたら、また殴られた。
安すぎ、って3倍返したじゃねぇかよ!
(2011.03.19)
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