嘘つき同士は浅い浅いキスをする

保健室でいきなり過ぎる告白をした日。俺は俺の発言に驚いた謙也さんを保健室に置き去りにして、一人部室に走ってすぐに荷物を持って校舎を飛び出した。保健室を飛び出す際と部室を飛び出す際に、保険医と部長に倒れた後なのだから走るなと言われたが、そんなものを無視した。
訳の分からないことをしてしまったことに焦り、俺はただひたすらに走って家につくなり部屋に飛び込んだ。二階の自室に向かうと階下から部活はどうしたの、と母の声が聞こえたから早退したとだけ告げた。

バックを投げ出してベッドに倒れ込んだ。保健室で冷やされた身体からは汗が引いていたはずなのに、走ったせいもあって身体は少し汗ばんでいた。寝ながらエアコンのリモコンを掴み、適度な温度でエアコンを付けるとそのまま起きることなく寝に入った。
今日のできごとは寝て忘れてしまえばいい。忘れてなかったことにしてしまえばいいと言い聞かせて目を閉じた。


それから二日、部活中に倒れたことを理由に続けて部活を休んだ。身体には異常はなにもなかったが、あんなことを言ってしまった以上謙也さんに会いたくなかった。会えそうになかった。
しかしそう言う訳にもいかないのだ。謙也さんとの時間は僅かで限られている。一緒にいたいと思いながら自分は何をしているんだろうか、思考と行動がバラバラだった。どうにかして一緒にいたいと思うばかり、行動が先に出てしまったのだ。
いつまでも部活を休むわけにもいなかなくて、あの日から三日目になる朝にはちゃんと部活に行く用意をしていた。今までと変わらない様子で自宅を出て、数日前と変わらない場所にあるテニスコートに向かった。

部活に行けば体調のことを部長に問われ、気をつけろだとかなんだとか色々なことを先輩達に言われた。その中で謙也さんだけはなんだかぎこちなく、何度か俺に話しかけようとして止めていた。
やっぱり気にしてるんやろうな、と俺は人ごとの様に思っていた。気にしてくれてたのは嬉しいことなのかも知れない。でも結果は嬉しいものばかりとは限らない。言いふらされてなかったことだけに安堵して、俺は今までと変わらない態度で、何も無かったかの様に謙也さんに話掛けた。

「おはようございます」
「お、おはようさん」

普通に挨拶をして横を通り過ぎて部室に向かう。謙也さんはどもっていて明らかにおかしかったが、知らないふりをした。

その日は一日ぎこちない態度を取られたままだった。俺が何もなかったという態度を取っても、謙也さんは同じ様な態度を取るのが簡単な訳ではなかったらしい。軽くラリーをしたときも俺のことばっかり見て、ボールなんて全然見ていなかった。
部活が終わるとちょっとええ? なんて呼び出され、部長に鍵を預かり部室に二人きりになる。

「話ってなんですのん?」

長い話をする気は無かったから俺は立ったまんま謙也さんに問う。謙也さんは俺より年上だと言うのにもじもじとしていて、中々話そうとはしてくれなかった。

「この間言ったことっすか。・・・あれじょ、」

冗談ですわ、って言いたかったのに言えなかった。遮られたからだ、謙也さんに。それも口で、だ。

(どうゆうことやねん)

「お、俺とこうゆうことできるってことやんな、」

自分でしておきながら口許押さえて謙也さんは真っ赤になりながら言った。俺は余りにも謙也さんが赤くなるから、なんだか妙にしらけてしまって驚きばかりが思考を埋め尽くした。

冗談やったんですわ、言えば謙也さんもお、俺も冗談に悪のりしてみただけやっちゅー話や! と言った。それを聞いてショックを受けたのは間違い無かった。

嘘でキスとかすんなやあほ。


少年達は口付けを交わす

(嘘つき同士は浅い浅いキスをする)
冗談でキスとかするあほどこにおんねん、俺のあほ


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