リミットは一週間(綱吉視点)


おかしい。絶対におかしい。


ボンゴレ本拠地、十代目ボス沢田綱吉は独りある悩みを抱えていた。

「獄寺くん、例の件どう?」

十年前から自称右腕と自分を称して今日まで一緒に歩んできたよき友人であり部下である獄寺隼人。自分座る執務机のすぐ隣に立つ彼に綱吉は今抱えている一番の悩みの種を問いかけた。

「あぁ、それなんですけど・・・まだ見つかってない様で・・・」
「そう、ありがとう」

返ってきた言葉は期待していた物ではなかった。この返答はもう聞き飽きるほど聞いたもので、いつまでたっても誰からも期待した答えなんて返ってこなかった。
綱吉は大きな溜息をついて机に頬杖をつく。

「どうして見つかんないのかなぁー、」

見つからない、その相手とはここ数ヶ月全く連絡が取れない上に一度も姿を現わさない雲雀恭弥の事だった。最後の任務の報告をしに来た後すぐに連絡を取ろうとした所携帯はつながらず連絡は取る事が出来なかった。
長年付き合いのある草壁に訪ねても、なんの連絡も来ていません。と言われてしまい連絡手段は途絶えてしまったのだ。最後の頼みであるキャバッローネのボスであり、恭弥の家庭教師であるディーノは呼びつければすぐに来てくれた。けどとても恭弥の事を話せる状態ではなかったのだ。
ずっとかっこいいと思って慕ってきた兄貴分の顔は誰にやられたのか交戦に巻き込まれたのか分からないが、とても酷い怪我をおっていた。そんな大変な時期に迷惑を掛けることが出来ずに結局用件を話す前に帰してしまったのだ。

その時はまさかこんな事になるなんて予測していなかったのだ。恭弥は仕事が欲しければふらっと突然現れ自分が面白いと思った任務と仕事だけ引き受け、終われば報告をしてすぐにまたどっかへ言ってしまうのだ。一回で連絡が取れないことは過去にもないことはなかった。
しかし大抵2,3回連絡をとるか草壁を通せばすぐに連絡はとれたのだ。
それが今回はどうしたのだろうか。数ヶ月経つというのに全く連絡が取れないのである。

「雲雀のやつどこいるんですかね」
「本当だよ・・・、これじゃあディーノさんの件どうしたらいいんだよ・・・」
「跳ね馬の件ですか?」

ちょっと前にディーノから綱吉に連絡が来たのだ。近々婚約をするからボンゴレに挨拶に来ると。そして綱吉にはどうしても恭弥に伝えなければならない理由があったのだ。



***



「ねぇ沢田、お願いがあるんだけどいいかな」

それは滅多に人に頼ることのない恭弥から放たれた言葉だった。初めてのことに若干驚きながらも綱吉は恭弥の申し出を受け入れることにし、どんな事なのか続きを促した。

「あの人が婚約するとか言ったら僕に教えてくれるかな」


え?


綱吉はこの時の恭弥の発言にとても驚いた。なぜなら綱吉はずっと前からディーノと恭弥がいい感じの中だと言うことを知っていたし、とっくにもうお付き合いまで進んでいると思っていたのだ。それなのに今の発言は何なのだろうか。
まるで、自分が相手ではないという様な発言。それに疑問を抱いた綱吉は怒られることに恐れながらも確認することにしたのだ。

「ひ、雲雀さんって」
「何かな」
「その、あの、ディーノさんと付き合ってるんじゃないんですか・・・?」

細心の注意をはらう。相手が決して怒らない様にと、不機嫌になりませんようにと。
しかし内容が内容だったせいもあり、綱吉の言葉を聞いた恭弥の眉間には皺が寄せられていた。

「それなんだけどさ」
「は、はい」
「よく分かんないんだ。僕にも」
「?」

恭弥の言ってることが理解出来ず綱吉の頭の上には疑問符がいくつか浮かぶ。首を傾げて分からないという素振りもしてみた。

「将来のある関係じゃないと思うんだ。だからさ、あの人が将来そうゆう相手を見つけて婚約になったら教えて」
「・・・それで雲雀さんは納得できます?」

なんとなく、なんとなく恭弥が他人の幸せを祝ってる所なんて想像できなくて綱吉はそんな事を聞いてしまった。
むっ、と一度眉間に皺を寄せることはあったがそれを言葉に出すことはなくて、それに綱吉はほっと息をついて安心する。少しの沈黙を挟んで恭弥はぽつりぽつりとしゃべり出した。

「・・・納得は、するよ。ちゃんと祝う。僕はそこまで子供じゃない」
「そうですか、ならいいですけど・・・」
「とにかく、連絡して。絶対」
「はぁ、わかりました」



***



なんて事が昔あったのだ。だから綱吉はなんとしてでも恭弥を見つけ出してこのことを伝えなくてはならないのだ。それなのにどうしたものか。肝心の恭弥はどこにいるかも分からずその上連絡すら取れない。ボンゴレ幹部の何人かでしか捜索をしていないにしてもこれはおかしな事だった。


一体、今どこにいるんですか雲雀さん!! 雲雀さぁぁーーーーん!!??

ディーノさん結婚しちゃうんですけど! お祝い出来なくても俺知りませんからね!ね!?


行き場のない叫びを綱吉は心の中で力一杯叫んだ。ディーノがボンゴレに来ると言ったのは一週間後、もうタイムリミットは迫っていたのだ。





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