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それは一瞬の事だった。キャバッローネファミリーの中の若手の部下が一人、口を滑らせた直後の事である。
彼は雲雀恭弥というボンゴレ最強の守護者と言われる人物が今一番気になってる事を言ってしまったのだ。彼に年長者のアイコンタクトは適用されなかったようだ。

「どうゆうことなのかな? 説明してくれるかい?」

にやり、と笑う恭弥はひやりと冷たいトンファを目先の人物の首筋へと押しつけ問いかけた。




「恭弥! 恭弥待てって!」
「待たないよっ」

キャバッローネファミリーの部下一人を脅して恭弥が分かった事は一つだった。
今ディーノは此処にいる。でも一人じゃないらしく、女がいるようだ。これを告げた本人は恭弥が女だと言うことを知らないらしく、ボスの愛人との時間は邪魔しないでください、と恭弥に頭を下げた。


へぇ。

何、あなたやっぱり愛人がいるの。しかも此処に。今。ふーん、そ。
僕にずっと隠してきたのは知っていたけど(あなたの部下から聞いたからね)、今日ついにその相手の顔が拝めるんだ。
きっと相手は綺麗な人なんだろうね。僕みたいに女を隠している様な人じゃなくて、見た目も中身も女性らしい人なんでしょ。

あなたの部下はすごくあなた思いのいい人ばかりみたいだね。よかったね。
僕とあなたの関係を知る何人かは必死に僕に隠そうとしてくれたみたいだったよ。無意味だったけどね。


真実を聞いた恭弥はまず今その事実を聞き出した者を咬み殺しキャバッローネ本邸の中へと向かった。
後ろから聞こえるロマーリオの声は全て無視をして、邪魔する者をトンファで投げ飛ばし力技で進んでいく。目指すはディーノの部屋だった。

「・・・いつかはバレる問題だったでしょ」

ピッと恭弥はトンファに付いた返り血をはじき飛ばす。振り返ってなんとか走って追いついたロマーリオと視線を合わせた。

「だって僕はずっと知ってたんだから」

そうゆう恭弥の顔はなんとも言い表せない表情にゆがんでいた。悲しい、けどずっと知っていた真実。いつかこうなる事が分かっていた。
ロマーリオは恭弥のその表情を見て黙り込む。

自分のボスが長いこと時間をかけて落とした女が目の前にいる。
彼女は確かに女らしくは無かったし、女らしいことは何一つして見せなかった。しかしその芯はしっかりしていて折れることなど無かった。自分は自分らしく、それが恭弥だったのだ。
そんな恭弥に惚れたボス。恭弥しか見えていないんだろうなと思えたボスはいつしか愛人を持つようになっていた。強いように見えて本当は誰よりも弱い彼女を想っていながらも、何故ボス愛人を作ったのだろうか。ロマーリオにはそれが不思議でならなかった。

「――恭弥」

少し声を潜めて名前を呼ぶ。たどり着いた先は目的の部屋の前だった。ドアノブに手を掛けようとした恭弥をロマーリオが名前を呼んで制止する。
恭弥はドアノブに触れていた手を離した。

「何」
「きっと、見たくねぇ物が待ってるぞ」
「別にいいよ。もう、知らないふりはしない。自分の目て見て自分で認める」

そう言うと恭弥は一つのため息をつく。それは大きくて深いもの。静かに息を吐き出し心を整えた。今度はドアノブには手を触れずトンファを持ち替え構える。

「お、おい、恭弥?」
「何、まだ何かあるの?」
「お前なにするつもりなんだ?」

今にもドアを壊して中に入ろうとするようにしか見えない恭弥にロマーリオは一応問いかけをする。どうみてもこれから壊します。と言った風にしか見えないが。

「ムカツクから壊して入る」
「・・・壊さないで入れないのか?」
「ドアノブに触れると緊張して駄目になりそう。そこで止めるなんて僕らしくない。僕は僕らしく、するつもりだけど?」
「あぁ、そうか、」

ならもう勝手にしてくれ、そう告げてロマーリオ半分呆れながらもは恭弥の好きにするように促した。


きっと責任はボスがとる。

いや、取らざるをえない状況になるだろう。


これが最後というのなら、


最後くらい素直な気持ちを伝えればいい。


壊したきゃ壊せ。あんなにも恭弥が想ったボスだ。きっと何かがかわるだろうから。



――中で濡れ場に発展していない事だけは願っておいてやる。





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