ずっと知っていたお前と気付かなかった俺


「恭弥・・・!?」
「久しぶりだね、ディーノ。ところでその人は一体誰なのかな?」


それは予想外の出来事だった。突然、珍しく本邸に愛人を招いた時に恭弥は現れたのだった。


久しぶりに訪れたイタリア、折角だからディーノに会ってから次の国へ行こうと考えた恭弥はキャバッローネを尋ねることにした。
ボンゴレ10代目ボスへと成長した沢田綱吉に報告をした時、恭弥は彼の超直感によるある予言を聞いたのだ。


 ***


「雲雀さん」
「何だい」

「…良くないことが起るかもしれません、」

綱吉は少し溜めた後に言葉を発した。そして心配そうな目で恭弥をみつめる。

「それは君の超直感ってやつ?」
「はい。…今日はディーノさんの所へ行くんですか?」

超直感か、と尋ねたら綱吉はまずディーノの事について返事を返してきた。このことに恭弥の頭には一つの事が思い浮かんでいた。
高校を卒業するときのディーノの部下の言葉。


――ボスにはお前以外に愛人がいるんだ。


イタリアに行くかどうかを考えていた時に告げられたその言葉。忘れもしない言葉だった。
恭弥が世界各地をまわると決める理由となった言葉だ。

「そのつもりだけど」
「そうですか・・・」

綱吉には恭弥が他人の意見に左右されないと言うことは分っていた。それでも告げたのだ。良くない事なんて起こって欲しくなかった。
綱吉がはぁー、と溜息をつくと恭弥は綱吉の名を呼んだ。

「沢田」
「? 何ですか? 雲雀さん」
「…心当たりがない訳じゃないから覚悟はしておくよ」

じゃあね、そう言い残して恭弥は綱吉の執務室を後にした。


***


キャバッローネ本邸へと着き、その大きな門の前に車を止めた。車から降りて門の中に入ろうとすると顔なじみのディーノの部下の一人が恭弥へと声をかけた。

「今日はお引き取り願えますか?」

その部下の表情は曇っており、恭弥はその部下の表情に違和感を覚えた。他の部下に関しては皆目が会うと青ざめた表情へと変わった

「何でかな。ここにあの人はいないの?」
「・・・」

恭弥の目の前のに立つ部下は何も黙っていた。


沢田の感があたったかな・・・。


そう考えていると遠くから見慣れた人物が走って来るのが見えた。ロマーリオだった。
ロマーリオは慌てた様子で隣に並び走ってくる人物からなにやら話を聞いている様子だった。

「恭弥!」

ロマーリオに名前を呼ばれ、恭弥は視線を合わせた。むす、と明らかに不機嫌になった表情を向けてにらみつける。

「何か用か?」
「…用がなくちゃ来ちゃ行けないのかい? 僕はただちょっとイタリアに寄ったから顔を出しに来たんだけど? あの人はどこにいるのかな?」
「えーと、な、恭弥」

いつもそんなに口を動かすことのない恭弥だったが、心の中でつき始めた怒りの炎のせいか今日はその口もよく動いた。
獲物を咬み殺すときのような鋭い視線を向けて、両の手には愛用のトンファをセットする。気に入らない答えが返ってきたら――


邪魔する者を全て咬み殺して進むだけ。


それだけだ。

「なにかな?」

話ずらそうに話し出すロマーリオに恭弥は返す。周りに立つ数人にロマーリオは目配せした。合わせろ、と。

「今日はボスはいないんだ」

ふーん、そう。

そう恭弥が答えようと思っていた時の事だった。


「あれ? ボスってさっき――…き、気のせいですね、」


キャバッローネの中ではかなりの若手のファミリーの一人が口を滑らせた。その言葉は周りのアイコンタクトに寄って遮られたけれど。





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