ラストリミット


ついに、ついに一週間がたってしまった。結局雲雀さんは何処にいるのか分からなくて今日これから起こるであろう事を俺は説明する事が出来なくなってしまった。

ディーノさんから今日の事で最終確認のため、と言って電話があったのが昨日の夜。今日のお昼ごろにボンゴレへとやってくるそうだ。・・・で俺は真剣に考えた訳なんだけどさ。
いくら同盟のファミリーだと言ってもまだ未発表の婚約の事をディーノさんはどうして俺に? そりゃ自分のファミリーには一番に話はしてるだろうけど。しかも聞けば俺にどうしても聞いておきたいことがあるらしくて、それを聞いてからじゃないと正式には発表しないみたいなんだ。

なんで?

俺は思うんだ。最近俺の周りには俺が不思議に思うことがすごい起きてるんじゃないかって。雲雀さんは俺にディーノさんの婚約が決まったら教えて欲しいと言ってきた。教えるのは構わない。けれど、どうして俺を通してそれを知らせなくちゃならないのかが分からない。
知りたいと思ったら自ら行動するのが常の雲雀さんが他人に頼るなんてそうそうあることじゃない。それに俺は雲雀さんはそう言ってくるなんて可笑しいと思うんだ。だって俺の中ではディーノさんが婚約するのは雲雀さんであって、それ以外ではないだろうと予想していたからだ。

そして俺は考えてるほど雲雀さんに連絡が取れないことが不思議でもないのだ。なんというか、自分の中の超直感とでもいうようなやつが何となくそうさせているような。きっと俺が心配してもそんなに大したことは起きないと予測できる。


刻一刻と流れゆく時の中で、期待と不安をふくらませながら綱吉は一人そんな事を考えていた。
と、そこまで考えた所で部下から連絡が入る。キャバッローネのボスが到着した、そう部下から通達を受けて綱吉は腰を上げ、約束の客を出迎えるため執務室を後にした。


「・・・・・・」


――これは目の錯覚だろうか。


そう綱吉が考えるのも仕方なかった。ディーノとそのディーノがどうしても綱吉に会わせたいという婚約相手は、どこからどうみても最近ボンゴレから姿が消えて一切の連絡が途絶えてしまった恭弥だったのだ。
いつもの様に愛想よく声を掛けてきたディーノに綱吉はうまくスムーズに反応が返せない。何となく予想の出来た予想外の事なのだ。
その場での話はアレだったので綱吉は二人を連れて客間へと移動する。恭弥の事を気にしてないような気になるようなで綱吉の頭はよく分からないことでいっぱいになっていた。

「・・・で、ディーノさん。えーと、どうゆう事でしょう?」

少し落ち着いたところで綱吉はそう切り出した。何となく沈黙の空気が重いと感じるのだ。

「俺さ、恭弥の事を真剣に考えて婚約する事にしたんだ。それで、ボンゴレのボスとしてのツナに許可を取りに来た」

真剣な顔をして話すディーノの横で恭弥はむっすりと黙っている。ディーノのその真剣な顔は嘘を言ってるようには見えなくて、綱吉はディーノが真剣にそう考えているのだと分かった。
"許可"ディーノはそう言っているけれど、綱吉は婚約に許可もなにもそんな事自分が決めていいのかと思っていた。二人が将来を約束し合ったのであればファミリーのボスの事なんて考えずに幸せになって欲しかった。
他のファミリーへ嫁いだとしてもボンゴレの守護者として過ごしてくれれば十分だ、と綱吉は一人頭の中で結論づけた。

「俺は二人の婚約に反対するなんて事しないですよ。ただ雲雀さんはこの先もボンゴレの守護者としてボンゴレで仕事してもらいますが良いですか?」

綱吉はディーノとその隣にいる恭弥に向けて言った。そして続ける。

「ただ、一つ条件がありますけどいいですか?」
「あぁ、何だ?」

ディーノがそう返すけれど、綱吉の視線は黙ったまんまの恭弥へと向かっていた。言いたいことがあるのだ。どうしても。

「今みたいに一切連絡が取れなくなって何処にいるのかも分からない状態は困りますよ。雲雀さん」

そう綱吉が告げると恭弥がぴくりと反応してみせる。しかし何も言わない。視線はどちらかに向いたままになっている。

「アレ、ちょっと待てよツナ」
「はい?」
「恭弥は今仕事がないんじゃないのか?」

ディーノは恭弥から今は仕事がないのだとも聞いていたし、ちゃんと綱吉にも連絡をとってると聞いてたのでそんな問いかけをした。

「雲雀さんは一言"しばらく休暇をもらうよ"と電話で告げてそのまま行方知れずだったんです」

酷いでしょう? 、そう綱吉は続ける。その事実にディーノは驚いている様子で、恭弥の名前を呼びつける。
そっぽを向いてた恭弥はその声でようやく会話に参加する形となった。

「なんでちゃんと連絡しねーんだよ。ボスには迷惑掛けちゃ駄目なんだぞ」
「別にかけてない」

即答でズバっと答える。すでにこの状況になってしまったことが迷惑を掛けてるとしか考えられないのに、恭弥はしれっとしていた。まるで自分は問題点のかやの外でもあるかのように。

「心配したじゃないですか」
「ツナがそう言ってんだぜ。迷惑かけてるんだよ」
「そんな事ないよ」

恭弥は自分に日があるという事を認める気は一切無いように見えた。最初に一言告げたからそれで充分である。そう言いたい様だった。

「・・・まぁとにかく。これからは必ず連絡には出るようにして下さいね!」
「ツナ、その辺は俺がしっかりぬかりなくみるよ」
「色々お願いしますね、ディーノさん」
「おぅ!」


そう言って笑顔になったディーノは幸せそうに恭弥を連れて帰って行った。そんな二人を後ろから見送りツナは幸せそうでなによりだ、と感じる。

"お互いが本当に好きな相手と一緒になれることが一番だ。"

綱吉は心の中でそう呟いた。


fin.



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