18.赤いイスと白いソファー

あの日を最後にディーノから連絡が来なくなった。

連絡所がディーノが日本へ来ることもなくなった。最初のうちは仕事が忙しいのかと思った。だからメールや電話が出来なくて、それでもいつか時間が出来たら会いに来てくれるのだと思っていた。これまでの様に。
いつだってそうだったからだ。ディーノが僕を忘れたことはないし、ディーノがいない生活なんて出会ってからありはしなかった。
それなのに今、僕の生活からディーノは日々いなくなっている。ディーノのことばかり考えていた僕の思考は、寂しさから考えるのをやめた。すぐに全てを考えることをやめることは出来なかったが、僕は少しずつ考えるのをやめた。
期待する自分が惨めで、期待する自分が弱くて、そのうちその辛さに耐えられなくなってしまいそうになったからだ。
ディーノは生活の一部になっていたのだ。それなのに突然いなくなって、すがり付くものすらなくて、
僕の胸にぽっかりと穴があいた。

あなたしか埋められない、あなたのためにあった空間に穴があいた。

素直になれない僕は消えたあなたの存在の様に、素直になるタイミングも伝える勇気も消してしまったのだ。
あなたを想うのはもうやめよう、きっと関係は、


終わってしまったのだから。
涙が出ないのは、悲しくないからじゃない。気が付いたら終わってしまってたからだ。



「イタリアに来ねぇか?」

高校でも変わらずに風紀委員会を立ち上げた恭弥は、中学と同じ様に応接室を委員会の部屋として利用していた。高校では普通の生徒になってもいいと思っていたが、なにかをしていないとおかしくなってしまいそうで、風紀委員会を立ち上げた。
一階にはないその部屋の窓から突然現れたリボーンは、部屋に現れるなり雲雀にイタリアに来ないかと誘った。

「…随分いきなりだね、」

行く、とも行かない、とも恭弥はすぐに返すことが出来なかった。行こうと考えたことがない訳ではないが、興味がない訳でもなかった。

「ヒバリは高校に進まずすぐにイタリアに来ると思ってたぞ」
「僕はまだ並盛を離れるつもりはないよ」

わざとリボーンの提案にがっつかない様に、恭弥はイタリア行きに興味がない様に接した。

「すぐに来てもいいんだぞ」
「それはどうかな」
「気になることがあるだろ、イタリアに」

リボーンは恭弥と視線が合うと、にやりと笑った。恭弥は隠していたつもりだったが、リボーンには全てお見通しだったのである。
最近ディーノが日本に来ることを避けていることも知っており、その原因に少なからず生徒だった恭弥が関係していることに。
イタリアと日本を行き来して、二人の様子を確認したリボーンには状況が大体把握出来ていたのだ。

「…行かないよ」
「それは残念だな。来るって言えば相手してやろうと思ったのに」

じゃあな、そう続けリボーンは窓を飛び降りて出て行こうとする。

「待って! それ、本当?」
「行かない奴には言えねーな」
「…行くよ」


*


リボーンの言葉でイタリアへとやってきた恭弥は、連れられるままに後ろを着いていった。ボンゴレの所有の空港に降り立ち、その風景に異国であることを認識する。
ディーノがたまに口にするイタリア語しか聞いたことがない恭弥にとっては、言葉は理解出来なかった。肩に飛び乗ったリボーンの指示通りに進む。

空港は日本と似ているようで違っていた。ボンゴレ所有のものだからなのか、あまり空港らしくない内装は恭弥の視線を釘付けにする。白い横長のソファーに真っ赤な1人掛けのイス。
一般的な空港ではないから、人は少ない。それでもマフィアらしい人物しかいないここは、まるで違う世界の様だった。


恭弥は気付いたのだ。初めてディーノのいる世界に自分もいることを。
ここは社会の裏ということを。

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