17.あなたとの日々が全てだったんだ
卒業式の日を最後にディーノとは会っていない。たった数日しか経ってないのに、すごく長く感じた。
あの日、ディーノはまるで最後だと言うように僕に触れ、帰りにはいつもと同じ様子で仕事だからとイタリアに帰っていった。
それなのにいつもの様に連絡は来ていない。メールだって1つもない。いつもだったらもう少し日本にいたかったなぁとか、次はいつ会えるとかメールしてくるのに。
何もなかった。
つまり今はそれぐらい仕事が忙しいってことなのかもしれないけど、急に放置されるなんてどうしたらいいのか分からなかった。
正直に言えば連絡を取りたい。話たいことだってある。
それでもディーノが忙しい時に僕からメールをするなんて出来なくて、今までにしたこともないことだから勇気が出なかった。
「…つまんない」
卒業式を終えて数日、恭弥にはやることがなくなってしまった。春休みに誰かと遊んだことなんてない上に、学校に行きたくても行けなかった。
高校にはまだ風紀委員を作っていない。これから作るかどうかも考えてなかった。
それこそ中学の時の様に雲雀恭弥がルール、というのを当然にしてしまえば出来ることだった。が、なんだかそれは子供染みたやり方すぎて、再びやる気にはなれなかった。
ディーノに出会って、恋人になって、年上の人だからか、そうゆうことに恥ずかしさを感じる様になったのだ。
恭弥は出来ることならディーノの隣に並んでも、少女扱いをされたくなかった。二人で出歩けば必ず幼い扱いを受ける。
ディーノはそれを気にしてはいなかったが、恭弥はそればかり気にしていた。
歳の差は埋められないかもしれないけれど、二人の距離が埋められた様に他のものは近付ける気がしたのだ。
ちょっとでも大人っぽくなって、女らしくなりたくて。
会えない間にディーノが驚くくらい、綺麗になると決めた恭弥は、その日から色々なことを始めた。
今までに気にしたことなかったスキンケアのこと、楽だからと短くしていた髪の毛、女とか気にせず雑にしていた足元、服装。
初めて周りに目を向けて今の自分を見てみる。どうしてディーノが好きになったのか分からない、恭弥はそればかり思うことになった。
恭弥はまず、自分と同じ年齢層の女の子と自分を比べてみた。中学ではどの子にも大差はなかったが、高校に進めば個人差は広くなっていた。
気が付けば1ヶ月以上ディーノと連絡を取っていなかったが、生活や環境が変わったことから恭弥はそんなことをすっかり忘れていた。
それでもディーノのために自分を変えてみようと思った以上、忘れていた訳じゃなかった。成長の過程で待つことが当たり前になってしまったのだ。
いつ、連絡をくれるか分からない人。
もう忘れられてしまったのかも。
そう思う頃には全てが今更すぎることも、だ。
とたんに生活が酷くつまらないものに見えた。
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