今までと、そしてこれから *+20

*DH+20


「あなたって変わらないね」

仕事終わり、待ち合わせして移動する車内で恭弥は突然そう言った。先ほどまでの会話が終了して間もない時のことだ。

「変わらないって、恭弥の方こそだろ?」
「そうかな。僕は結構変わったよ、自分でも分かるくらい」

恭弥はディーノから反応があると、隣に座るその肩に自分の頭を預けた。体重を預けてもたれかかる。
その行動にディーノが思うのは、疲れたのかな、とか今日は甘えたい日なのかな、とかそんなことだった。

恭弥は自分で言った通り、自身の変化を自覚している。ディーノに出会ったことでこれまでの色々なものを変化させられ、当時守り続けた孤高はあっという間にディーノという人間の存在を認めてしまった。人と会話せずに生きていくことが出来ないように、風紀も一人で出来ることではなかった。
過程の中で接する人間はいたとしても、プライベートまでこうして一緒に過ごす様になるなんて、当時は思いもしなかった。

「変わったと言うより、変えられたっていうのかな。あなたに」
「急にどうしたんだよ」
「別に。思っただけ」

ディーノは恭弥の突然の発言の意図がよく分からなかった。いきなりそんなことを言い出すのは、何か思うことがあるのかもしれない。

ディーノが恭弥に出会ったのは今から20年も前のことである。仕事、家庭教師として生徒の恭弥の元へ行ったのが始まりだ。当時はどうすればいいのか分からない程、恭弥の接し方に悩まされ、時には面倒臭いとも感じたこともあったくらいだ。
それでも一緒にいればいくら大人びていたとしても、恭弥は中学生だということを度々思い出させられる。思い出す度に少しずつ可愛さを感じる様になった。将来の伴侶がいなければ子供もいない。それなのに恭弥に関わると、子を持った親のような気持ちになるから不思議だった。
子供がいたらこんな感じになるのかな、なんて将来の自分を思い描いてみたこともあった。しかし20年経った今、そんな未来は訪れなかった。それは恭弥に向けた感情に変化があったからだ。

「変わらないと言えば、確かに変わってねぇなぁ」
「思うところがあるみたいだね」

ディーノの呟きに恭弥が反応する。

「恭弥に対する気持ちは変わり様がないからな」
「…なにそれ」

それが恭弥の望む答えだったのか分からないが、ディーノにとっては確かなこととして思い浮かんだものだった。何年経ったって、今までもこれからも変わらずに自分は恭弥を好きなままでいると思うのだ。それは好きというよりとっくに愛に変化しているのだから。
ディーノの言葉に恭弥は呆れてしまった。そんな発言が出てくるとは思わなかったし、自身満々の眼差しで見つめられると慣れた視線も恥ずかしくなってしまう。狭い車内で視線は恭弥しか捉えない。反らすのもあからさまでおかしくて。

「照れた? かわいいな〜恭弥は」
「もうそんなの聞き飽きたよ」

ディーノの伸ばした手が恭弥の頬に触れる。恭弥はその手に自分のものを重ねて、熱した頬に触れる指先を絡め取った。
出会った時はいつか追い越せると思っていた身長、手の大きさ。しかしそのどちらも恭弥がディーノを追い越すことはなかった。その証拠に重ねた手はやっぱりディーノ方が大きかった。どちらかと言えば中世的な手をしている恭弥に対して、ディーノの手は筋張っている。ファミリーを守る手は恭弥に対しても安心感をもたらす大きな手だった。
空いた片手はディーノの首に回して引き寄せ、どちらともなく唇を重ねた。慣れたそれは啄む様に繰り返され頬から目元へ、目元から額へと移動するとゆっくりと離れていく。

「これからもよろしくな、恭弥」
「死ぬまで離してあげないから、覚悟しておきなよ」


-------
はるさめさまフリリク
ご本人様のみお持ち帰り可能です。

[ 4/8 ]





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -