群れが嫌い

「そういえば、あいつの名前なに?」

ディーノと綱吉、それに加えてリボーンを交えて登校中ディーノは思い出したように言った。あいつと言うのは今話題にも出ている雲雀恭弥のこと、ディーノは風紀委員長ということははっきり記憶していたが、その名前は曖昧だった。
雲雀という名前はディーノの耳にはなじみのない日本語であり、その名前は日本では珍しい。クラスメイトに聞いた様な気もする名前はよく分からない。

「ひば、ひばり、さん?」
「なんだディーノ、早速あいつが気になったのか?」

ディーノは記憶の中で名前を思い出す。それに食いついたのはリボーンだった。
綱吉が反応するよりも早くリボーンが先に言う。ディーノを見つめる視線はとても楽しそうだった。口元も少し上がっている。

「気になったというか…」

リボーンは二人の歩くすぐ横に続く屏の上を歩いていたが、ディーノの肩へと飛び乗った。上手いバランスで着地しては会話を続ける。
ディーノはリボーンの質問に思考を働かせていた。気になった、というのは正解であって正解じゃない気がしていたのだ。確かに昨日会った恭弥のことは気になる存在であるからこそ、今話題になっている。
でも気になったのは興味というよりも、疑問からだった。何故、校内にあんな奴がいて何も言われないのか。それがディーノが気になる理由なのだ。

咬み殺す、と恭弥は実際に使っていたがディーノはその言葉のでる明確な理由が分からない。昨日話した感じではただ苛々しただけだからと言ってもおかしくもない。そんな自分勝手な様が許せない様な、気になるような。

それとも突然な喧嘩をふっかけられたことが理由なのか。

「雲雀恭弥だぞ」
「ん?」

ディーノが考えていると傍のリボーンが突然言った。しかし突然のことにディーノの頭はそれに反応出来ない。

「一回で聞け! へなちょこ」
「いでっ」

いまいちな反応はリボーン不愉快さをもたらせ、ディーノは肩からという至近距離で蹴りをプレゼントされる。そのまま転ばなかったあたりその威力は低かったとわかるが、至近距離ということで痛みはかなりのものだった。
痛みに頬を抑えるとゴツ、と鈍い音がした。

「ディーノさん!?」

綱吉の声に顔を上げると灰色が目に入った。どうやら壁としてのコンクリートとぶつかったらしい、とディーノが思っていると周りから笑い声が。
周りを見るとそこには綱吉よ同じ制服を着た生徒達が数人。すぐ横の門から中に入っていく。つまりここは校門横なのだ。

「へなちょこはどこまでもへなちょこだな」

リボーンはそれだけ言い残すとどこかへ行ってしまった。ディーノは綱吉に腕を引かれながらそのまま保健室に向かった。おでこはたんこぶが出来る程度ではあったが、おでこに出来た理由を説明すれば保険医も笑っていた。なんとなくディーノが恥ずかしかったのは言うまでもない。

まるで屋敷で"これだから坊ちゃんは"といつも世話焼きの者達に言われているようだったからだ。

その日も校門に風紀委員は立っていなくて、綱吉だけがそのことに安堵していた。ディーノの話を聞くかぎり、恭弥は普段とは違う相手に所構わず咬み殺しに来ると思っていたのい、実際はそうではなかった。
登校は平和、ディーノのせいで少し目立ってしまったのが普段と違うだけだった。


恭弥が群れが嫌いということを、この時ディーノは知りもしなかった。

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