最初の関門は校門に有り

沢山の不安と共に出発した個人ジェット機。それが日本へと到着したのは昨日の午後のことだった。
ディーノは前日の睡眠不足と機内での疲れからその日は何もすることなく、すぐさま眠りについた。不安が取り除かれた訳ではなかったが、重なった様々なことはディーノに睡魔をもたらし深い眠りを呼び寄せた。

気がつくと次の日の朝で、ディーノは自分を起こしに来たロマーリオの声で目が覚めた。日本での仮住まいはイタリアほどの歴史と雰囲気のあるお屋敷ではないが、日本の中では大きい住宅だった。
しかしディーノは日本の一般的な住宅のサイズを知っているはずもなく、その大きな住まいは一般的なものだと感じていた。そして同時に

(これくらいの狭さなら迷うこともないな)

とも感じていた。ロマーリオの他に数人屋敷から付いてきた世話係諸々がいる。促されるままに支度をしてディーノは日本での知人、沢田綱吉の家へと向かった。

沢田綱吉はキャバッローネ社と長い付き合いのある会社の、次期社長と言われている人物だ。ディーノより二個年下で、これから通う学校の生徒である。今日は道案内も含め一緒に登校することが決まっていた。

「よぉツナー」

綱吉とディーノはそれなりの仲良しだ。お互いに次期社長候補ではあるが、そうゆうのは無しに年が近いこともあり仲良くなったのだ。

「あ、ディーノさんお久しぶりです」

久しぶりに会う綱吉。ディーノは日本にいる唯一の年の近い友人に表情が軟らかくなった。自分の将来を知っていて、お互いにそれがどうゆう立場なのか理解しあえる相手。それが二人が仲良くなった理由だった。

「うぇっ」

綱吉の姿を見つけて近付こうと思うと、ディーノは自分の脚に自分の脚を絡ませて転んでしまった。ディーノは昔からどこか抜けているところがあり、これはよくある失敗の一つだった。

「相変わらずだな、へなちょこ」

ディーノの前にとす、と降り立つ小さな音が聞こえる。小さな赤ん坊と表現するには服装も口調も似合わないリボーンが立って言ったのだった。
リボーンはディーノにとって日本で会えてもあまり嬉しくない知人だ。

「り、リボーン!?」

大企業の息子、ということで金銭目的で犯罪に巻き込まれることは少なくはない。特にイタリアは日本ほど治安は安定していない上に、犯罪も日本よりも悪質だ。そのため自分の身は自分で守れる様にとディーノに色々教え込んだのがリボーンなのだ。
リボーンは自分を家庭教師と称したが厳しすぎる授業、というより修行はディーノに嫌な思い出ばかりを残した。それ故今でもディーノはリボーンを見るだけでビクビクしてしまうのだ。

「早く立たねぇと二人とも遅刻だぞ」
「へ? 今何時…ってうわぁ! ディーノさん行きますよ!」
「お、おう!」

綱吉に腕を引かれるままにディーノは走り出した。ここまで一緒に来ていたロマーリオに行ってくる、と告げると頑張れよ〜となんともやる気のない声で返された。
きっとロマーリオは分かっているのだ。ディーノが帰ってきたらまず第一に不満をこぼすということを。今日は言わないようにしよう、とここでは思うディーノだったがそんなことはすぐに忘れてしまうのだった。

綱吉とディーノは学校までの道のりを走ってなんとかギリギリに着くことが出来た。しかし校門には生徒の姿はほとんど無く、同じように息のあがったものや焦った表情の生徒ばかりだった。

「今日はいないみたいでよかったぁー」

息を整えながら綱吉が言うので、ディーノは疑問に思うのだった。いつもはなにがあると言うのだろう。


それはまだディーノの知らない並盛の最強(凶)風紀委員長率いる風紀委員の存在そのものだった。


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