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「ふ、楓斗くん…?」
ハッと我に帰ると目の前の幼なじみ――美作 紫(ミマサカ ユカリ)が三つ編みにした髪を揺らし、大きなメガネの奥から心配そうな視線を送っていた。
少し、考えすぎてしまったようだ。
「なんでもないよ。昨日のことをちょっと考えてただけ」
「そっか、なら…よかった」
楓斗の返事を聞き安心したようで、紫は微笑み前を向き歩き出した。
彼女に話したことは<赤色の少女に出会った>ことだけだ。
(紫は…巻き込んじゃいけない)
男たちに追われたことや自分がなぜか慕われていることは伝えるべきではないだろう。
思いを自らの心に秘め、楓斗は紫を追い歩き出した。
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