再会

「ちょっとトイレへ…」

今ここでむかつくクソ砂を文字通り砂に返したい気持ちを抑えるのも、 ポールダンサーだのロリコンだのあらぬ疑いをかけられるのにも我慢の限界であった。 よくここまで耐えた、俺。初めは一介の吸血鬼ハンターとして竜の一族を監督する責任があると渋々この新年会に参加したわけだけれど、 もうどうにでもなれ。 そんな思いでパーティ会場の扉を開けた時、 どんっと何かにぶつかった。咄嗟に謝ろうと目を向けると、 思ったよりも高い位置に顔があるのが分かった。 ズン…と佇むだけでも伝わってくる威圧感に一瞬冷や汗が背を伝う。 気圧されそうになっていると、 視界に入ってくる美…美女…???顔は隠している様であまり見えないけれど、 光景がアンバランスすぎる。 俺が言葉を失うと同時に、 後ろがざわつき始めた。
「お、御真祖様おじいさま
!」
「今日は来ないと仰っていたのに!」

先程まで和やかであった空気が一変して、 なんだか少し部屋の温度が下がったような気さえもする。
みんながざわつく理由も、 突如現れた吸血鬼の正体も分からず、 ひっそりとドラ公に話しかけた。

「おじいさま…誰だ、あいつ」
「一族最強の…そして最も厄介な吸血鬼だ」

お祖父様と呼ばれる吸血鬼と話をして、 ドラ公の説明を聞いていると、 どうやらお祖父様というのは面倒くさい先輩の様な吸血鬼らしい。 能力値が高い且つ強いことはわかったが、 なんせやっている事がフランクすぎる。中二の夏休みか。

「まあ…そんなことより、 私が気になるのはその腕に抱かれている彼の方だがね」
「………は?彼って…」

「そうそう。サプライズフォードラルク」
「うわ、!」

にゅっとドラ公と俺の間に現れたお祖父様の腕から、 美女がドララクめがけて投げられた。 美女もこれは予想外だったのかポカンとした表情をしている。
すぐ死ぬクソ雑魚おじさんが、 細身とはいえ美女を受け止められるわけがない。 かといって避けるのは明らかに美女が怪我をする。

「うわーーーっ!!死ぬ!!!」
「おいッ!ドラ公!砂になってでもその子ちゃんと受け止め……て…」
「急に人を投げては危ないですよ、御真祖様おじいさま


死ぬと叫びながら両腕を広げたドラ公は塵になっておらず、 美女はそんなドラ公の数センチ上をぷかぷかと浮いていた。 これあまりやりたくないのだけれど、 と言いながらドラ公の目の前に降り立った美女は、 髪をさらりと直しながら綺麗に笑った。

「久しぶりだね、 ドラルク」

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