再会

「ハロー、久しぶり」

キラウエア火山の探検中、 その人は何の前触れもなく突然現れた。

「し… 御真祖様おじいさま、」

どうしてここに、 と続きを紡ぐ間もなく浮遊感が襲う。肩に担がれたのだと気づいた時には火口が遥か眼下だった。
この人の突飛な行動には慣れているし、 私も似たようなものだしなあと自戒しながらもぞりと腕からすり抜けて自ら背に羽根を生やした。御真祖様のものより黒い羽根を横に伸ばす。

御真祖様おじいさま、 今回はどこに行くのですか?」

今まで何度か御真祖様の都合で連れ出されたことがあったし、今回も72時間サバンナ横断リアルボードゲームに付き合ってとか、アフリカサファリパークツアーだとかそういう類だろうと思っていた。

「今日は、 新横浜でパーティだから」
「しん…??どこですか、 それ」

そもそも何のパーティ??思わず首を傾げた私にチラリと一瞬だけ目を配って、 御真祖様は華麗にUターンを決めると、 私の腕を引っ張った。 慌てて羽根をしまって衝突しかけた私を難なく受け止めると、 片腕を腰に回されて持ち上げられる。
…これは所謂片腕抱っこというやつなのでは…???

「え?御真祖様…???これは??」
「こっちの方が早いから。 ちょっと音速を超えるよ」
「音速を超えるのはいいですが、 この格好は些か恥ずかしいというかぁあああ!!」

話している途中で突然スピードを上げた真祖様に振り落とされないようにしがみ付く。 そりゃ御真祖様に比べれば私の飛行速度なんてゴミカスでしょうけども!早すぎて目が半開きになる。

「どう?楽しい?」
「た、楽しいですが口の中が乾燥…うぁ!?なんか飲み込んだ!!」

こうして私達は音速でしんよこはまというところまで飛んでいったのである。




「ここだよ、 新年会のパーティ会場」
「うぇっ、まだ口の中バサバサするゥ…」

水を飲もうにも口に入った何かを共に飲み込むことになるので、 トイレで口を濯いだけれど、 まだジャリジャリとした感覚が残っているようだった。というより、口の粘膜の水分的な潤いが全部持ってかれた気がする。

「新年会って…竜の一族のですよね?私はいつも参加してないですが…」
「今年はドラルクも来るって。 私も気が変わったからついでにストラ連れてきた。ストラはスマホ持ってないから、 探すのちょっと大変だった」
「私も参加していいのですか?」
「うん。 君は私の孫だからね」

胸元のハンカチで口を拭う私を、 御真祖様は再び片腕抱っこで持ち上げた。 突然の浮遊感を感じて、 思わず御真祖様の頭にしがみついてしまう。 先程は音速を超えていたので仕方なしにしがみつかせていただいたが、今は貸切にしているというパーティルームまでのレッドカーペットを歩いているだけだ。

御真祖様おじいさま、私歩けますよ」
「いいから。 こっちの登場の方が盛り上がるよ」
多分、と付け加えた御真祖様は表情があまり変わらないから何を思っているのかが分かりにくい。 何を考えているのか思考を巡らせるのをやめて、 私は大人しく御真祖様に体を預けた。

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