「なぁ、嘘をつく奴が最低ならさ、この世界には『優しさ』を肯定する奴はいないのかな?」
「なんだよ、いきなり」
俺の言葉に夕飯をつくっていたあいつが振り返った。銀色の髪が光に当たってキラキラと輝いている。それを見ながら、だってさと続けた。
「人間ってさ、確かに自分のために嘘ついたりするけど、ごく稀に他人のために嘘をつく奴もいるだろ?それも最低の部類にはいるのかなって」
「でも『嘘をつく』って行為にはかわらねぇだろ」
冷静に言い放ったあいつは、俺に背を向けた。
人は優しさのために嘘をつく。真っ白な嘘。人を騙す真っ赤な嘘とは全く違う。嘘にも種類があって、今あいつがついてる嘘はきっと――
「シルベットってさ、嘘下手だよな」
うるせぇよと怒るあんたが愛おしい。あんたは俺に嘘をついてる。俺を傷つけないための『真っ白な嘘』を。
あぁ、そんなあんたが愛おしい。愛おしいよ、あんたが。
「ころしてやりたいくらいに、いとおしい」
切り刻んで苦痛な顔をしたあんたがみたい。優しく笑ってくれるあんたをみたい。俺を殺してくれるあんたがみたい。あんたとずっと一緒にいたい。
「あれ……」
矛盾ばっかだ。
俺は気持ちに『真っ赤な嘘』をついてるんだ。
もし、嘘をつく者が最低ならば、きっと俺みたいな『気持ち』に嘘つく奴のことを言うんだろうな。
それでも俺は嘘をつく
「あんたを――」
それが俺の最大の防御だから
嘘をつく者が最低ならば
「殺したい」
俺はきっとそいつら以下だ。
(嘘をつく者が最低なら)
嘘をつく者が最低なら
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