「赤ってあまり好きじゃねぇな」

一束だけ色の違う髪を触りながら彼女は言った。光が当たるたびにキラキラと輝く銀色の中、存在感を放つその赤色の髪は彼女の中の強さだったり、燃えるような信念を表しているかのようで自分は好きだ。

ソファーに座る彼女を見つめれば、何も言わずとも理由を話してくれる。

「赤ってさ、血みたいだろ? 血は時間が経てば黒になる。俺のこの赤もいつかは黒に染まるのかなって」

馬鹿みたいだよな、と彼女は笑った。その笑顔があまりにも切なそうで哀しそうで。自然と彼女の赤い髪に触れていた。
サラサラと指の間を滑り落ちていく彼女の髪が愛しい。かけていたサングラスを外して、彼女の真っ赤な目を見つめる。

「もし…、貴女が黒くなってしまったら…」

そのときはその黒よりも鮮やかな赤を貴女に捧げると誓いましょう。
自分のこの髪を目を血を心臓をもって貴女を黒から救い出すと誓いましょう。
貴女を決して置いていかない。自分という赤は何時までもどこまででも貴女を愛すと誓いましょう。

誓いとともに彼女の赤い一束の髪にキスを落とす。自分の赤に誓って。貴女の赤に誓って。

「な、なんだよ…突然…!」

顔を離せば真っ赤に染まる彼女の頬。目を逸らした彼女はふと、自分の髪に視線をやった。そして、髪をすっと撫でていく。彼女に撫でられた箇所から体中に幸せが満ちていくかのようだった。

「赤は好きじゃないだけどさ、お前の髪の赤色はすげぇ好き」

(好きな色)

好きな色






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