「………夜月か」
「ロゥお兄様、御気分はいかが?」


ひょっこりと地下室に顔を出した夜月に、ロゥは小さく首を振った。地下室は鉄格子で部屋半分を隔てられていた。これはロゥが勝手に部屋を出ないためだ。
ロゥが首を振ったのを見て、夜月はそうですかと首をうなだれた。


「だが、先ほどお前が贈ってくれたもので、少しは腹の足しになった。ありがとう」
「い、いえ!あれくらい気になさらないでください!」


礼を言われたことを嬉しく思いながら、夜月は申し訳無さそうに頭を下げた。


「ごめんなさい、最近人間がうまく捕まえられなくて……ロゥお兄様には辛い思いをーー」

「気にするな。それよりも、お前。その腕は?」


はっとした夜月は嬉しそうに自分の左腕を触った。また、新しい四肢が増えたのだ。また、本物に一歩近づいた。


「新しい腕です。もう少し、もう少しで本物になれるんです。ロゥお兄様に食べて貰えるまで……あと少し……」


嬉しそうに、愛おしそうに微笑んだ夜月に、ロゥはそうだな。と小さく返事をするしかなかった。
夜月が去った地下室、ロゥは一人でため息をついた。

ロゥは決して彼女を食べたいわけではないのだ。むしろ、何故か彼女だけは食べたくはなかった。だが、夜月は本物になってロゥに食べられたいという。


「俺が、こんなのだからいけないんだろうな」


グルルルルルと、大きく腹が鳴った。
いくら食べても気が済まない体。飽き飽きしていた。この体に。

グルルルルルと、また腹が鳴って、ロゥは考えるとこを放棄した。




(嗚呼、腹が空いた)


怪物4






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