「蒼刃見て!私に新しい足ができたのよ!」


スカートを捲って自分の新しい足を見せつけてくる葵紀に、蒼刃は自然と笑みがこぼれた。よかったなと彼女の頭を撫でてやる。
嬉しそうに蒼刃の腕を受け入れていた葵紀だったが、ふと、悲しそうな表情をした。そんな彼女を蒼刃が優しく抱き上げる。人形の葵紀は驚くほどに軽い。そして、冷たかった。


「冴えない顔をしてるな。どうしたんだ?」
「本物になったら………蒼刃は私のことを嫌いになるのかなって思ったの」


まさかの葵紀の言葉に、蒼刃は驚きを隠せなかった。何故そんな事を聞くのかと尋ねてみた。


「だって、蒼刃は人形の私を好きになってくれたんでしょう?なら本物になったら嫌われるのかなって」


不安そうに言った少女を蒼刃は強く抱きしめた。葵紀は驚いたように蒼刃に目を向ける。

「嫌いになる訳ないだろ。俺は人形の嬢さんにじゃなくて、葵紀っていうあんたに惚れたんだから」


抱きしめる力を緩めて顔をはなす。すると、葵紀は少し照れくさそうに笑った。


「約束よ、私を嫌いにならないでね」
「あぁ、約束だ」



(愛しい人形と約束を)


怪物3






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