「ケイン、好きだ。愛してる」
「知ってる」


カルトの突然の告白にも、俺は動じることはない。だって、カルトが俺の好意を寄せていることは知っていたから。というか、カルトの激しいアプローチを見たら馬鹿でもそうだと思うだろう。


ーーでも、だめなんだよ


「…俺もお前も男。それに、人とポケモンだ。俺たちは結ばれないんだよ」


彼にとって厳しいことを言っているのかもしれない。でも、本当のことなんだ。俺達は性別は一緒で種族が違う。仮にもし、俺がここで承諾したとしてもほかの連中がそれを只では済まさないだろう。特に、俺達人間は。


「分かっている。それでも…俺はお前が好きなんだ」
「カルト………」


どう反応したらいいか分からず、視線を落とす。もちろん、気持ちはうれしい。だけど……。
カルトがそっと、俺の頭を撫でた。


「困らせるつもりはない。そう返してくることも分かっていた。ただ、伝えたかったんだ」


いつもの優しい笑顔だった。それでも、どこか悲しげ。居たたまれなくなって俺は口を噤むことしか出来なかった。
カルトが“なぁケイン”と声をかけてきた。


「俺は、どこに行っても何があっても、お前の元に帰ってくると誓うよ」
「いきなり何だよ」
「何となく、言っとこうと思って」


にこりと笑って俺の髪をかき乱す。おい、やめろよ。せっかくセットしたのに台無しじゃないか。思いつつも、俺は何故かその手を退かすことができなかった。




**

予感はしていたんだと思う。だから、それを告げられても別段驚きも焦りもしなかった。


ある日の、月が綺麗に丸くなった夜。シーが突然俺の部屋に飛び込んで来たのだ。そして焦った声で一言。


「カルトが出て行った!!」


リビングに行くと、ジェリンナとウィーンもいた。二人は俺に紙を手渡してくる。そこにはカルトの字で『ちょっと旅にでる』とだけ書かれていた。
ウィーンがため息をついて声をだす。


「今、焔星さんが空から探してくれてるわ」
「主人……カルトさん、見つかりますよね……?」


ジェリンナの心配そうな視線。それを受けて、俺はほほえむ。それから、シーに言った。


「焔星に帰ってくるよう伝えてくれ」
「は?何言ってんのよ。それじゃあカルトはーー」
「探さなくていい」


まさか、俺がそんな事を言うとは思ってもいなかっただろう。シーは訳が分からないと俺を睨みつけてきた。ジェリンナとウィーンは俺が言ったことの意図を汲み取ろうとしている。


「あいつは忍だ。一定の場所に居続けるとこはないんだよ。それに、あいつは俺に誓ったから」
「誓った?」
「そう。だからどんなに時間が空いたとしても、あいつは必ずここに帰ってくる」


俺の真剣な表情に、シーもジェリンナもウィーンも、渋々ながら納得してくれた。焔星に帰ってくるよう、連絡を入れる。
あいつなら大丈夫。どうせ今頃、どっかの大きな木の幹にでも座って、この満月をあくびしながら見ていることだろう。


**


暗い森の中、大木の幹に座る影。綺麗に丸まった月を見て、大きなあくびを一つこぼした。


「………待ってろよ、ケイン。種族も性別も関係なくお前を惚れさせるほどいい男になって帰ってやる」


巻いている首巻きで口元を隠し、忍は夜の森を駆け抜けていった。



(ある満月の夜の情景)


それでも惚れてくれないなら、お前を攫っちまうからな!
「ケイン、好きだ。愛してる」
「知ってる」


カルトの突然の告白にも、俺は動じることはない。だって、カルトが俺の好意を寄せていることは知っていたから。というか、カルトの激しいアプローチを見たら馬鹿でもそうだと思うだろう。


ーーでも、だめなんだよ


「…俺もお前も男。それに、人とポケモンだ。俺たちは結ばれないんだよ」


彼にとって厳しいことを言っているのかもしれない。でも、本当のことなんだ。俺達は性別は一緒で種族が違う。仮にもし、俺がここで承諾したとしてもほかの連中がそれを只では済まさないだろう。特に、俺達人間は。


「分かっている。それでも…俺はお前が好きなんだ」
「カルト………」


どう反応したらいいか分からず、視線を落とす。もちろん、気持ちはうれしい。だけど……。
カルトがそっと、俺の頭を撫でた。


「困らせるつもりはない。そう返してくることも分かっていた。ただ、伝えたかったんだ」


いつもの優しい笑顔だった。それでも、どこか悲しげ。居たたまれなくなって俺は口を噤むことしか出来なかった。
カルトが“なぁケイン”と声をかけてきた。


「俺は、どこに行っても何があっても、お前の元に帰ってくると誓うよ」
「いきなり何だよ」
「何となく、言っとこうと思って」


にこりと笑って俺の髪をかき乱す。おい、やめろよ。せっかくセットしたのに台無しじゃないか。思いつつも、俺は何故かその手を退かすことができなかった。




**

予感はしていたんだと思う。だから、それを告げられても別段驚きも焦りもしなかった。


ある日の、月が綺麗に丸くなった夜。シーが突然俺の部屋に飛び込んで来たのだ。そして焦った声で一言。


「カルトが出て行った!!」


リビングに行くと、ジェリンナとウィーンもいた。二人は俺に紙を手渡してくる。そこにはカルトの字で『ちょっと旅にでる』とだけ書かれていた。
ウィーンがため息をついて声をだす。


「今、焔星さんが空から探してくれてるわ」
「主人……カルトさん、見つかりますよね……?」


ジェリンナの心配そうな視線。それを受けて、俺はほほえむ。それから、シーに言った。


「焔星に帰ってくるよう伝えてくれ」
「は?何言ってんのよ。それじゃあカルトはーー」
「探さなくていい」


まさか、俺がそんな事を言うとは思ってもいなかっただろう。シーは訳が分からないと俺を睨みつけてきた。ジェリンナとウィーンは俺が言ったことの意図を汲み取ろうとしている。


「あいつは忍だ。一定の場所に居続けるとこはないんだよ。それに、あいつは俺に誓ったから」
「誓った?」
「そう。だからどんなに時間が空いたとしても、あいつは必ずここに帰ってくる」


俺の真剣な表情に、シーもジェリンナもウィーンも、渋々ながら納得してくれた。焔星に帰ってくるよう、連絡を入れる。
あいつなら大丈夫。どうせ今頃、どっかの大きな木の幹にでも座って、この満月をあくびしながら見ていることだろう。


**


暗い森の中、大木の幹に座る影。綺麗に丸まった月を見て、大きなあくびを一つこぼした。


「………待ってろよ、ケイン。種族も性別も関係なくお前を惚れさせるほどいい男になって帰ってやる」


巻いている首巻きで口元を隠し、忍は夜の森を駆け抜けていった。



(ある満月の夜の情景)


それでも惚れてくれないなら、お前を攫っちまうからな!


満月






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