おしゃべりは好きだ。それ以上に噂話が大好きだ。何処からともなく噂を聞いてきて、それを皆に教えてあげる。怖い話も面白い話も悲しい話もぜーんぶ、望んだ人にお話ししてあげる。



それが、僕は好きだ。





「なぁ、相模?今日はどんなお話を聞かせてくれるんだ?」





不敵な笑顔で彼女は笑う。僕のお話が好きだっていってくれる彼女。きっと彼女のお仕事に“役立つ”からなんだろうけども。





「えっとねー、今日のお話はディムくんが好きそうなお話だよ!」

「へえ。そいつは楽しみだな」





カラリと笑った彼女はやはり、僕の噂話をただの情報源としか思っていないのだろう。疑いすぎなのかもしれないけれど、まだ出会ったばかりだし疑っちゃうような態度を彼女は沢山取ってきてるから仕方ないのかもしれないね。



それでも、僕は彼女に話す。

少しでも、彼女の役に立てるならって、友達として仲良くなりたいなって思ってたから。







「………ディムさんは……」

「え?」



かなり遅くまでお話に没頭してしまった、満月の夜。彼女は仕事が山のように詰まっていて疲れていたようだった。お話が終わった時には彼女はすっかり眠ってしまっていた。そんな彼女を彼女のお付きのお兄さんが抱き上げる。その時、初めて僕の前で言葉を発した。



「……あなたは…ディムさんが…あなたの話を役に立つから聞いていると……そう思ってるようですが………」



静かで、抑揚のない声だった。それはストンと僕のなかに落ちてくる、不思議と安心する声だった。



「……ディムさんは役に立つ立たない関係なく………純粋に、あなたのお話が好きなんですよ………」



微かに、口の端を上げて微笑んだかと思うと、お兄さんは彼女を連れて僕の前を後にした。

お兄さんの言葉が身体中を駆け巡っていく。

僕が話す度に彼女が楽しそうに笑っていたのを思い出す。

僕が話す度に彼女が優しく微笑んでくれていたのを思い出す。

僕の噂話を好きだっていってくれた彼女の瞳を思い出す。



何の偽りもない澄んだ赤い瞳。それが彼女の瞳だった。





なぁんだ、僕ったららしくもなく人を疑っちゃって、馬鹿みたい。

彼女は――ディムくんは本当に僕のお話を好いてくれてるんだ。



それがなんだか嬉しくて、僕は口許が緩むのを押さえきれなかった。





(今度はどんなお話にしようかな!)





やみまる様宅 シャンデラ♂/相模さん



お借りしました!

僕の噂話




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