ジャック | ナノ






初夏のある金曜日。珍しく忍が学校をやすんだ。いつも元気な忍だから驚いた。どうやら夏風邪を引いてしまったらしい。本人は案外元気だったけど咳が酷くてみんなに移したら大変だという理由で休むらしい。
その旨を雷に伝えたら、そっかと素っ気なく返してきたけど明らかに心配しているかのような表情をしていた。

その日は雷は先に帰っていた。あたしは隼を待とうと思ったけど、明るいうちに帰った方がいいと言われて先に学校を出た。
学校を出たときに目に入った夕日が、どこかあいつが持っているランタンに似ていて。気がついたら家じゃなくて、あの雑木林の先にある大木にまでやってきていた。


「ジャック」


名前を呼ぶも反応はない。
いつもジャックが座っているところにはなにもないし、誰もいない。
本当にハロウィンの日にしか会ってくれないんだ。なんだか、がっかりとした気分のままあたしは家に帰ることにした。


「……………あれ…………?」


あれ?あれ?
なんで?
いくら進んでもどれだけ進んでも雑木林を抜けられない。何時もならすぐ抜けれるのに。そんなに深くなんてない雑木林なのだ。本当に、すぐにーーー


「な、んで?」


走り出すが、結果は同じ。
怖い怖い。怖いよ、なんで、どうして。
走って走って、前に進むけど進んでない。
しばらく走ってみたけど、結果は変わらなかった。はぁはぁ、と肩で息をしてその場に立ち止まる。膝に手をついて、顔を上げて、辺りを見回したらもう空は真っ暗。あたりに見えるのは木、木、木。前も後ろも横も。


「なんなのよ……」


ガサガサ!



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