視線03


「え?」
「私、女の子に見える?」
「それは勿論。綺麗ですよ」
「よかった。無駄に体大きいから、男の子に間違われること多くて」
 確かに、彼女の顔は小さかったが体は少し大きめだった。肩のあたりなどはどことなく、男性の骨格に見える。
「でも、うん、言ってもいいかな」
「何をですか?」
 可愛くくるんと回ると、腰を曲げて上目遣いで翔子の顔を窺う。こんなこと、誰がされてもクラッと来てしまう。実際、翔子のライフポイントはもうゼロに等しい。
「私、男の子だよ」
 とりあえず気絶してもいいですか。
「──え、あ、冗談ですよね?」
「冗談だと思った? 残念、本当だよ」
「いやいやいや、だって声とか普通に女の子」
「声変わりしなかったからさ、これ地声」
「……あの、整形とかは」
「してないよ、そんなお金無いもん。女装しかしてない」
 不平等だ。幼い頃から事ある毎に思ってきてはいたが、これはあんまりだ。どうしてこんな綺麗な子が女の子じゃなくて男の子なんて、もっと男にすべき女はいただろうに。というか。
「女装だけでそんな綺麗なら、元々顔がいいんじゃ」
「それはよく言われる。けどやっぱりメイクの力が大きいよ」
「そ、そうですかね?」
「あれ、メイクとかしない?」
「よく分かんなくて。まだいいかなって」
「失礼だけど、今幾つ?」
「十六です」
「若っ!? それはメイクしなくてもいいね」
 いやあしっかりしてるなあ若いのに、一人頷いている彼女──もとい彼は、男だと言われてもいまだに違和感がある。翔子自身、女の子と喋っているようなものだ。
「そちらは?」
「私? 二十歳」
「大学生ですか! 見えないです」
「まあメイク頑張ってるから」
 さて困った。粗方喋ってしまったお陰で話が続かない。いつの間にか反対側のドアは閉まっており、翔子達側のドアが開いているが、車両には二人以外乗客はいない。
「……あの、いいですか?」



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