視線02


 呼び掛けても返事がない。目は開いているから聞こえてはいるだろう。ただ、理解が出来てないだけかもしれない。もう一度口を開くと、瞳が零れ落ちそうな勢いで瞼が開かれた。しばらくボーッとしていたが、ゆっくりと体を起き上がらせながら、右目を軽く、白い手で擦り始める。
「あの……」
「…………えっ、次終点!?」
 随分飲み込むのに時間がかかったが、ようやく彼女は次が終点ということに気付いた。
「はい、次は終点です」
「ああ、完璧に寝過ごしたあ……まあいっか、ねえ、この電車折り返し?」
「そう……だと思います?」
「何で疑問系……もしかして、寝てたの?」
「まあ、はい」
「降りる駅過ぎちゃった?」
「そうですね」
「そっかあ。じゃあこのまま乗ってていいんだ」
 見た目とは裏腹に、彼女は快活な少女だった。翔子も何となく察してはいたが、年は翔子の方が幾らか下のように思える。フレンドリーな彼女に、翔子は更に興味がわいた。
「あの、どこで降りる予定だったんですか?」
「結町。大分過ぎちゃったけど」
「まだマシじゃないですか、私笹名島ですよ」
「それはちょっと寝過ぎだと思うけど」
「やっぱりそう思います?」
 隣で笑っていた彼女の体が大きく揺れ、翔子の方に傾いた。勢いのまま、もう一度寄り掛かる形になる。
「大丈夫ですか?」
「やっぱり慣れないもの履いてるとダメだなあ。怪我無い?」
「私は何ともないです」
「ならよかった」
 彼女の喋り方は、無意識に翔子の心のあたりを刺激する。なんだろう、私この人に惹かれてる?
 電車が完全に止まり、翔子達と反対側のドアが開いた。同じ車両に乗っていた人が全員降りて、しばらく車両は二人だけの空間になる。すると、彼女がふわっと立ち上がった。折り畳まれていた脚は座っていた時よりも幾分か細く見え、スキニーパンツが更に細く見せていた。
「ねえ、どう思う?」



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