「千歳ー、起きてってば。もう部活始まってるよ」 こんな一言で起きてくれるのなら、マネージャー業はすごく楽になるに違いない。もちろんそんな一言で起きてくれる訳もなく、わたしの呼びかけを受けた張本人はうっすらと目を開け、そして再び閉じただけだった。 「…って閉じないでよ!」 「まばたきばい」 「そんな訳あるか!」 「騒がしいやっちゃね。むぞらしか顔が台なしたい」 「調子のいいことばっかり言って…」 部員の千歳はしょっちゅう居なくなる。千歳にサボりの理由を聞いてみれば、今日はトトロに会える気がしたからだのなんだの…うん、よくわからない。理由はともかく、その度に部長である白石に捜索命令を出され、探しに向かうのがマネージャーのわたしなのである。 「ねえ千歳、部活たのしい?」 「ん?楽しいばい みんな強かし」 「そっか…いや、ならいいんだけどさ。ごめんね変なこと聞いて」 「……マネージャーの心配しちゅうことは違うけん、心配せんでよかとよ」 やっぱり千歳は、鋭いなあ。わたしは不安だったのだ。もしかしたら千歳の部活をサボる理由が部活にあるのかもしれないって。四天宝寺に来る前の千歳の噂をたくさん聞いて、わたしはひとりで不安になって。千歳はそんなわたしの不安ごと、ふんわりと否定してくれた。 「ちゃんとマネージャーを全国大会に連れていってやるばい」 「…うわ…千歳がその台詞を言うとは思わなかった」 「なんね、俺だって言う時は言うばい」 「はいはい」 「照れてるとたい」 「違 い ま す」 「むぞらしかねえ」 「もうっ千歳!からかわないでよ」 「本気ばい」 「え?」 「マネージャーが俺に惚れるまであと一週間ってとこたいね」 夢見る少年 千歳、一週間もかからないよ。だって、いまわたしすごく ドキドキしてる 企画「少女と星屑」さまへ。 |