夏の夜はいつも不安になるの。だけどね、今年はあなたが居るから大丈夫だよ。


ムーンライトセレナーデ



「ねぇねぇ見て〜」
「ふふ…面白くないよ文貴」
「えっ今笑ってたじゃん!」


フニャフニャと笑う文貴を見ていたら不安な気持ちも飛んでいきそうな気がする。夏は好きじゃない。わたしにとって悲しいことや辛いことが起きるのは、いつも夏だから。彼氏と別れるのも夏、親友と喧嘩をするのも夏、文貴が試合で悔しそうにしているのもいつも、夏。ビシャ!あ、新品の靴だったのになあ。水溜まりに靴が浸かってしまう今日も夏なのだ。


「今年の夏はさあ、」
「なに?」
「ちょっと違うかもよ?」
「なにが違うのよ」
「いいことあるってこと!」
「はあ、そう」

「もーちゃんと聞く!だって今年は勝つよ」
「俺、甲子園なんて夢の向こうだと思ってたけどさ」
「手が届かない訳じゃないんだよな」

「だからさ、」
「…うん」
「今年の夏は楽しいよ、きっと」


そう言った文貴を信じれそうな気がして、なんだか夏が楽しくなりそうな気がしちゃって。図々しいかもしれないけれど、今年の夏は白球を追う彼らにかけよう。そう思った。ねえ、わたしだって夏を好きになりたいって思っているんだよ。

そんな16歳の夏の夜。



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from 高城澪
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