※大学生設定 「梓ぁ、まだ?」 「まだだって」 「…あと何分?」 「んなの俺が知りたいよ」 数少ない連休、天気も上々。だったらドライブにでも行こう!そう思ったのは私たちだけでは無かったらしい。前を見ても後ろを見てもおまけに横を見て見ても、車、車、車。信号は動いてるはずなのに車は全然進まなくて、窓の向こうはさっき見たときと変わらずに同じ景色だった。 「…あ!」 「どうし、た…」 窓の向こうの景色に飽きてしまった私は梓の方向、ちょうど反対車線の車に視線をやった。その光景に思わず声が出た私を不思議に思い、梓も視線をそちらへ向けた。 渋滞で動かない車。車内で2人きりの恋人同士がすることなんて一つしかない。何てことはない、反対車線に居たカップル達は熱々のキスをしていたのだ。しかも長い。私は隣りの梓にちらりと視線を移した。梓も見ていたんだろう、彼の耳は真っ赤に染まり、耳どころか頬まで林檎のようになっていた。なんとなく気まずい無言の車内。なにか言わなきゃ、そう思っていたら梓が先に口を開いた。 「す、すごかったな」 「う、うん…」 「……」 「……」 「…な、なあ」 「うん?」 「お前もさ…あーいうことしたいの?」 あーいうこと?言われたことがいまいち分からずに首を傾げると、「だからっ…その…キスとか」ぐわっと頭をかきむしり、ぼそぼそと説明をしてくれた。自分で言ったことに照れているのか、恥ずかしいそうにしている梓を見て、くすりと笑ってしまった。 「私もしたいな、」 「えっ!?」 「っていったら梓困るでしょ?」 「…んなことねえよ」 「…へっ?」 からかうつもりで発した言葉。だけど私を真剣な目で見つめる梓に「冗談だよ」だなんて言えなくて。肩を引き寄せられ、徐々に2人の距離が近づく。頬をするりと撫でられて、ゆっくりと私は瞼を閉じた。 ロマンスに堕ちる チサトハッピーバースデー! 澪より |